研究課題/領域番号 |
21H01625
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
寺西 貴志 岡山大学, 自然科学学域, 准教授 (90598690)
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研究分担者 |
中山 将伸 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10401530)
三村 憲一 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 主任研究員 (20709555)
近藤 真矢 岡山大学, 自然科学学域, 助教 (20890205)
岸本 昭 岡山大学, 自然科学学域, 教授 (30211874)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | リチウムイオン電池 / 酸化物系全固体電池 / 界面制御層 / 界面抵抗 / 電気化学ポテンシャル / Li化学ポテンシャル |
研究実績の概要 |
本研究は,酸化物系全固体リチウムイオン電池における電極‐電解質固体界面の局所的な電気化学ポテンシャルを精密に変調する「界面制御層」を介した新しい高速電荷移動モデルを提案する.具体的には,界面制御層の材料,構造パラメータが界面電気化学ポテンシャルに与える影響を明らかにし,酸化物固体界面における高速電荷移動を実現させることを目的とした. まず,界面制御層として,有機電解液系リチウムイオン電池で実績のある誘電体BaTiO3を用いて検討した.現状,酸化物系全固体電池は室温において,電極と電解質の界面抵抗が極めて高い.界面制御層の効果を正確に抽出するため,まずは界面電荷移動抵抗Rct 10kΩ・cm2以下を目指した. そこで本年度は,界面制御層の効果検証に用いる酸化物系全固体電池の構造最適化を図った.全固体電池は,電解質(Solid Electrolyte, SE)に電極合材を塗布させて作製するSE支持型電池と,電極粉末とSE粉末を同時焼結して得る一体焼結型電池の2通りで検討した.いずれも正極としてLiCoO2(LCO),電解質(SE)としてガーネット型Li6.5La3Zr1.5Ta0.5O12(LLZT)を用いた.SE支持型においては,条件最適化の結果,Rct=2.9kΩ・cm2@室温を達成した.一方,一体焼結電池では,交流周波数24GHzのミリ波照射による焼結プロセスを用いた.焼結プロセスの最適化により,最終的にRct=10kΩ・cm2@室温を得た. 以上,開発・最適化したSE支持型電池がより高出力型の電池であったため,界面制御層の効果検証は,SE支持型電池を用いて次年度以降検討を行うことにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
界面制御層の効果検証に用いる酸化物系全固体電池として,SE支持型電池と一体焼結型電池の2種類に着目し,同時並行的に最適化を行い,到達性能を確認した.結果,SE支持型電池,一体焼結型電池いずれにおいても,室温動作する高性能電池を作製することに成功した.また,当初目標としていたRct 10kΩ・cm2以下を,SE支持型電池において達成することができた.次年度以降,界面制御層の効果を確認するための全固体電池形態を決定することができた.
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今後の研究の推進方策 |
SE支持型電池において,界面制御層の効果を検証するためには,Liの電荷移動パスである電解質SE‐界面制御層‐電極の三相界面を作り出す必要がある.今後は,界面制御層BTと正極LCOの混合粉に,SEのLLZT粉末を混合させて,三相界面密度を増大させる.これにより,界面制御層の効果を増強して抽出可能となると考える.さらに,界面制御層の組成やLi含有量・誘電率,添加量などを調整し,電池評価を行う.各電池において電池特性とRctを測定し,界面制御層の材料・構造パラメータとの相関関係について議論する. 他方,DFT分子動力学計算による検証も行う.各種材料を界面制御層として用いた場合,界面電荷移動に関わる素反応エネルギーをそれぞれ計算し,実電池結果との整合性を確認する.
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