研究課題/領域番号 |
21H01634
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
植松 英之 福井大学, 繊維・マテリアル研究センター, 准教授 (80536201)
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研究分担者 |
杉原 伸治 福井大学, 学術研究院工学系部門, 教授 (70377472)
福島 啓悟 福井大学, 学術研究院工学系部門, 講師 (50725322)
山根 正睦 福井大学, 産学官連携本部, 特命准教授 (60755263)
田上 秀一 福井大学, 繊維・マテリアル研究センター, 教授 (40274500)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 界面接着性 / 高分子の結晶構造 / 強化繊維 |
研究実績の概要 |
強化繊維周りの高分子の結晶構造が強化繊維と高分子の界面接着性あるいは破壊挙動、複合材料の力学特性に及ぼす影響を明らかにして高分子の特性を活かした繊維強化複合材料の創出のための材料設計指針を明らかにすることが本研究の目的である。初年度は、高分子構造が強化繊維との界面接着性や力学特性に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。投稿論文として受理された中から2つの事例を報告する。 シングルフィラメントを用いて、ポリプロピレンと炭素繊維(CF)の界面接着性が無水マレイン酸変性PPの添加によってどのように変わるかを結晶構造の観点から評価した。CF近傍でのPPの結晶成長が界面接着性に効果的に働いていることが示された。 ポリアミド6(PA6)と表面の粗さの異なる2種類のCFを用いた連続繊維強化PA6の界面特性と力学特性の関係について評価した。CFが様々な方向に配置した擬似等方材料の4点曲げ特性を評価した結果、CFの種類によらず強度や弾性率にほとんど差が現れなかった。しかし、表面の粗いCF(rCF)と比較して表面の滑らかなCF(sCF)から成る複合材料では面内方向のデラミネーションが発生しやすいのに対して、PA6/rCFでは面外方向の破壊が支配的であった。落錘衝撃特性を評価したところ、PA6/sCFの衝撃吸収エネルギーがPS6/rCFよりも明瞭に大きかった。PA6/sCFでは広範囲においてデラミネーションが起きていること、sCFでは界面で破壊し、rCFではPA6領域で破壊(凝集破壊)していることと関係付けられた。CF近傍のPA6の結晶を評価すると、sCF表面に近いとPA6のα結晶が少なく、rCF表層ではPA6のα結晶が多いことが示された。従って、CF表面近傍でPA6のα結晶が発達することで界面破壊に基づくデラミネーションが抑制されたことが明らかにされた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
シングルフィラメントを用いた検討において、ポリプロピレンだけでなくポリアミド6、ポリカーボネート、結晶性ポリスチレン、ポリフェニレンサルファイドなどのエンジニアリングプラスチックに加え、ポリエーテルエーテルケトンなどのスーパーエンプラを用いた検討にも着手している。また連続繊維の複合材料については、表面粗さや表面官能基の大きく異なる炭素繊維との界面特性、力学的特性、高分子マトリクスの結晶構造の関係を継続して検討しており、投稿論文を執筆中である。従って、様々な高分子の結晶構造と界面特性を明らかにすることで、目的とする高分子特性を活かした複合材料創出のための材料設計の指針を確立する目的達成に向けて順調に進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
強化繊維近傍での高分子マトリクスの結晶構造が界面特性、破壊挙動に及ぼす影響は明確に示されてきた一方で、結晶構造が変化する機構が新たな課題として見えてきた。強化繊維界面に着目して、界面での高分子構造を分子動力学計算から予測すること、強化繊維界面での高分子構造の評価を実験的に進めることで強化繊維近傍の高分子マトリクスの構造形成メカニズムを明らかにすることを大きな目的として検討する。また、1年目で検討された様々な高分子、様々な強化繊維を用いた界面特性と高分子マトリクスの構造の関係に関する成果を、投稿論文、学会発表など積極的に配信する。
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