研究課題/領域番号 |
21H01639
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
石田 尚之 岡山大学, 自然科学学域, 准教授 (80344133)
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研究分担者 |
森 隆昌 法政大学, 生命科学部, 教授 (20345929)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 溶媒和力 / 分散凝集 / 表面間力 |
研究実績の概要 |
本研究は、有機溶媒中で固体表面間に働く相互作用力を原子間力顕微鏡(AFM)で測定するとともに、溶媒分子の表面への親和性の相関をパルス核磁気共鳴(NMR)法によって評価し、これらが粒子の分散安定性相互作用に与える影響を検討することで、新たな非水液体中での微粒子分散評価体系の構築に資するものである。 本年度は、表面改質を施さない場合、またシランカップリング剤での表面改質により各種官能基を担持した場合のシリカ粒子および表面について、各種有機溶媒中への分散液のNMR緩和時間を粒子濃度に対して測定し、固体-溶媒分子間の相互作用の強弱を評価した。またAFMにより粒子-基板間の表面間力を測定するとともに、バルク分散液の分散凝集特性の評価も行った。 結果においては、表面改質の有無や表面に担持した官能基の種類によらず、ほとんどの場合には溶媒中で粒子が分散する系において、表面間に~5 nmの短距離の斥力が作用し、凝集する系ではvan der Waals引力とみられる引力が作用することが確認された。これとNMRによる緩和時間測定で得られた固体-溶媒分子間の相互作用の強弱と、固体表面間の斥力または引力の発生を比較すると、両者には明らかな相関がある可能性が強いことがわかった。つまり緩和時間が短く固体-溶媒分子間の相互作用が強いときには固体表面間に斥力が作用し、緩和時間が長く固体-溶媒分子間の相互作用が弱いときには固体表面間には引力が作用した。すなわち、粒子表面-溶媒分子間の相互作用が強い場合には固体表面に吸着した溶媒分子間の溶媒和力によって、微粒子の分散安定がもたらされていることが示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度はコロナ禍の影響により、主要機器たるパルスNMR装置等の選定・納入に遅れが生じ、AFMによる表面間力測定およびバルク分散液の分散凝集特性評価を行った系全てについては、対応するパルスNMRの測定を行うことができなかった。しかしながら、装置納入後測定した系においては、NMR緩和時間と表面間力測定およびバルク分散液の分散凝集特性の相関が予想通り得られてきている。また、測定も効率的に行えるようになってきているため、今後測定を加速させ、表面間力測定およびバルク分散液の分散凝集特性評価を行った系全てについてNMR緩和時間のデータを取得し、それらの相関についての詳細な検討を行っていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、改質により官能基を担持した表面について、表面と溶媒のもつ官能基・原子団の物性が、どのように表面・溶媒分子親和性に与っているか評価する。特に異なる官能基をもつ表面・溶媒間での比較から、親和性に影響を与える因子とその機構を探索する。また、種類や物性だけでなく、分子サイズや形状の影響についても解析する。 これをもとに、表面間に働く相互作用の作用範囲・強さのパラメータの変化について、表面と溶媒の官能基物性や、表面・溶媒分子親和性、溶媒分子の表面における構造化などの観点から、それらの因子が相互作用のパラメータにどのような変化を与えるのかを検討して、相互作用の発生機序を明らかにする。 同時に相互作用の作用範囲と強さが、バルク粒子の凝集速度定数をどう変化させるか精査し、凝集速度論の適用により両者の定量的関係を明らかにする。
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