研究課題/領域番号 |
21H01644
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研究機関 | 一般財団法人ファインセラミックスセンター |
研究代表者 |
北岡 諭 一般財団法人ファインセラミックスセンター, その他部局等, 主幹研究員 (80416198)
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研究分担者 |
金高 弘恭 東北大学, 歯学研究科, 教授 (50292222)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 酸窒化チタン / コーティング / 抗菌性 / 生体親和性 |
研究実績の概要 |
電子ビームPVD法により予備酸化したTi基板上に形成した針状構造を有するTiNOセグメントに対して、JIS-Z-2801に準拠したフィルム密着法により大腸菌に対する抗菌性を評価した結果、抗菌性に優れる可能性が示唆されたが、株化骨芽細胞様細胞(MC3T3-E1細胞)を用いた培養実験による細胞誘導性評価においては、現用材よりも生体親和性が低かった。 そこで、この針状セグメントに対してナノレベルの構造解析を実施した結果、厚さ1~2μmのセグメントはTi欠乏型の岩塩型結晶からなること、針状構造は表面エネルギーの低い安定面で構成されることを明らかにした。また、KPFMによりDRY表面の電位を計測した結果、針状構造の凸部表面は主に負に帯電しており、凹部は正に帯電していることを確認した。つまり、表面電位が膜厚方向で大きく異なることがわかった。さらに、この針状セグメント形成の再現性を支配する因子を抽出し、抗菌性と生体親和性に関する取得データの信頼性向上に努めた。また、抗菌性と生体親和性を共に向上させることを目指して、針状構造を維持して表面電位のみを大きく変化させる方法を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
電子ビームPVD法によりTi基板上に形成した針状TiNOセグメントにおいては、厚さ方向の表面電位が大きく変化していることを明らかにした。また、針状セグメントは現用材よりも抗菌性に優れることが示唆されたが、生体親和性は劣っていた。一般に固体表面の生体親和性は表面電位に強く依存する。したがって、抗菌性の発現が示唆された針状セグメントに対して、表面形状を維持して表面電位を変化させることができれば、抗菌性と生体親和性を併せ持つ表面被膜を形成できる可能性が期待できる。つまり、性能向上に向けた具体的な研究方針を示すことができたことは大きな成果であるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
(1) セグメント構造体の創成(JFCC):窒素源を含む雰囲気ガス(酸素分圧制御窒素)を導入した減圧環境下において、Tiターゲットを電子ビーム照射により溶融・蒸発させ、所定位置に配置した予備酸化Ti基板上にTi-N-Oセグメント構造体を形成する。次に、得られた構造体を雰囲気制御した環境下にてアニールすることにより、セグメント構造体の表面電位を変化させる。そして、セグメント構造体の局所構造と表面電位の関係を明らかにする。 (2) 生体親和性(細胞誘導)の評価(東北大):代表的セグメント構造体に対して、コーティング面が接触する部位に応じた培養実験により細胞誘導性を評価・解析する。歯肉接触の場合はヒト歯肉繊維芽細胞、骨接触の場合は骨芽細胞を使用する。 (3) 抗菌性の評価(東北大):上記と同じセグメント構造体に対し、大腸菌、カンジダ菌、歯周病菌(P. gingivalis)、う蝕菌(S. mutans)等に対する抗菌性を評価・解析する。 (4) 機能発現のための最適構造設計(JFCC、東北大):上記項目(1)~(3)の情報を基に、セグメント構造と生体接触部位に対応する特性(細胞誘導性、抗菌性)との相関を把握することにより、特性向上のための指針を示す。
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