研究課題/領域番号 |
21H01650
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
三宅 純平 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (30581409)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 高分子合成 / 燃料電池 / 高分子電解質 / 膜 / プロトン伝導 |
研究実績の概要 |
研究代表者はこれまでに、主鎖が安定な炭素-炭素結合のみから成るプロトン導電性芳香族高分子は、固体高分子形燃料電池の膜/バインダー材料として、非常に安定に作動することを報告している。しかし、そのような高分子を合成する手法は限定的であり、分子構造の多様化/コストの観点から、新しい有望な高分子電解質合成法の出現が望まれている。他方、超強酸触媒ヒドロキシアルキル化重合は、金属触媒を使うことなく、また、特に不活性雰囲気下でなくとも、安定な炭素-炭素結合のみから成る高分子を安価に合成できる数少ない重合法として知られている。また、親水部/疎水部がある程度連続して高分子主鎖を構成している高分子電解質(例えばセグメント化芳香族アイオノマー)は、良好なナノ相分離構造の形成ゆえに、高性能な膜が得られやすいことが知られている。 本年度における様々な検討の結果、超強酸触媒ヒドロキシアルキル化重合条件を工夫することで、両末端がCl- or Br-フェニルに制御されたオリゴマー(Cl- or Br-TFTAオリゴマー)を良好な収率で合成可能であることを発見した。この発見により得られたCl-TFTAオリゴマーを疎水部に用いた山本重合により、従来にない新しいカテゴリーの高分子電解質群「安定な炭素-炭素結合のみから成るセグメント化芳香族アイオノマー」の先駆けであるSP-BAF-OligoTFTA1(Mn = 28 kDa, Mw = 85 kDa)の合成に初めて成功した。得られたSP-BAF-OligoTFTA1膜は非常に高い化学安定性を示し、フェントン試験後も高い維持率(重量 = 99%、分子量 = 95%、IEC = 100%)を有することから、固体高分子形燃料電池の膜/バインダー材料として、非常に有望であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初計画していなかった新規高分子電解質合成法を発見したため。この発見により、高性能/高安定な燃料電池用高分子電解質膜/バインダーの分子設計がさらに多様化するだけでなく、これら材料の低コスト合成法への道標を切り拓くことに成功したと言える。
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今後の研究の推進方策 |
上述の通り、本年度は予期に反して、有用な新規高分子電解質合成法を発見したため、今後は特にこのテーマに焦点を絞った研究を展開していく予定である。 ①超強酸触媒ヒドロキシアルキル化重合によるテレケリックオリゴマーの分子構造の最適化 これまでに成功している分子構造はOligoTFTA1のみである。ベンゼン環の結合位置や置換基(たとえばCF3基など)の検討により、膜物性を最適化する分子構造を特定する。 ②高性能/高安定な燃料電池用高分子電解質膜/バインダーの低コスト合成法の開拓 Br-TFTAオリゴマーを用いたin-situボリル化/鈴木・宮浦カップリング重合に挑戦する。これにより、山本重合により得られる高分子電解質材料と遜色ない物性を、低コストで達成可能か検討する。
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