研究課題/領域番号 |
21H01662
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
佐藤 裕 東北大学, 工学研究科, 教授 (00292243)
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研究分担者 |
鴇田 駿 東北大学, 工学研究科, 助教 (60807668)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 溶接・接合 / 異材接合 |
研究実績の概要 |
種々の合金元素を含むAl合金板と鋼を接合し、接合体の引張せん断試験を実施した結果、接合体は接合界面で破断するが、元素添加により引張せん断強度は上昇した。特にNi添加、Ni+Si複合添加とNi+Zn複合添加が効果的であったことから、Al/Fe接合界面での変形・破壊に及ぼすNi添加の影響について調べた。X線トモグラフィによる接合界面でのき裂発生・進展を調べた結果、き裂は界面層(Fe2Al5)端部から発生して、界面層内部をジグザグに進展し、き裂発生に要した荷重はNi添加とともに増加した。界面層へビッカース圧子を打つことで発生した複数のき裂の発生箇所を調べた結果、き裂は金属間化合物の結晶粒組織と無関係に進展することが分かり、Ni添加による違いは見られなかった。界面層の組織を詳細に調べた結果、Ni添加の有無にかかわらず、界面層は主にFe2Al5とFeにより構成され、FeはFe2Al5内に島状に分布し、Fe側へ近づくにつれてFe量は増加していた。界面層でのき裂進展を詳しく調べると、き裂はFe2Al5で発生・進展し、Fe相を迂回していた。また、Ni添加に伴い、Fe2Al5が微細化した結果、微細なFe相がより均一に分布していたことから、Ni添加に伴う強度上昇はFe2Al5の微細化に伴うFe相の微細分散に起因していることが明らかとなった。さらに、界面層が厚くなると、Al側に近いFe2Al5のFe相周辺にボイドが形成され、ボイドの量は界面層の厚さとともに増加し、ボイドはき裂の発生・進展に影響していることが示唆された。以上のことから、Fe2Al5内におけるFe相とボイドの分布がAl/Fe接合体の強度支配因子となっている可能性が高く、これらの制御により継手強度の向上に有効なことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初購入予定だった物品の納入が困難になったため若干遅れ気味である。当初の目標では、「界面層での変形・破壊の起点・進展の特定」と「強度発現機構の解明」は2年間で完了させ、3年目は「界面層の形成挙動の検討」に注力する予定であった。Ni添加に伴うAl/Fe接合体の強度上昇に対する「界面層での変形・破壊の起点・進展の特定」と「強度発現機構の解明」は終わらせることができたが、Ni+Znの複合添加に伴う更なる強度上昇に対しては、3年目の早い段階で結論を得るように努める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
Ni+Zn複合添加によるAl/Fe接合体の強度上昇に対して、「界面層での変形・破壊の起点・進展の特定」と「強度発現機構の解明」を早急に進める。同時に、Al2Fe5におけるFe相とボイドの形成機構に関するNi添加の影響を解明するため、熱履歴の付与に伴う組織変化を系統的に調べる。さらに、Fe相とボイドの分布の制御法を検討し、優れた接合強度を有するAl/Fe接合体を得るための界面層の組織制御指針の提示に努める。
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