これまでの研究によって,フッ素系ポリマーにナノアルミナ粒子を数%混合させることによって,粒子間強度が向上し,成膜性が向上することを明らかにしてきた.また,活性金属である純チタンをボンドコートして用いることで,基材とポリマー皮膜の成膜特性を顕著の向上させることも明らかにしてきた.チタンボンドコート採用による成膜性向上のメカニズムが明らかとなっておらず,種々のポリマー材料を対象に,他のボンドコート材料の検討,成膜後の表面粗さの効果,ボンドコート酸化有無の効果等を詳細に検討した. その結果,ボンドコートの表面粗さは,ある表面粗さ以上になると顕著に成膜効率を向上させることを明らかにした.ただし,材種を変化させた場合でも,同じ表面粗さを有する場合,成膜効率は同等であり,材料による差は認められない傾向を示した.コールドスプレー皮膜の表面粗さは,ランダムであることから,基材の表面粗さを均等にする目的で,レーザーを用いテクスチャリング処理することで,表面粗さを変化させた。この場合も基材材料による影響はなく,表面粗さのみで成膜効率が変化することを突き止めた.今回の結果では,60ミクロン程度のポリマー粒子を用いているが,表面粗さが15ミクロン以上になると顕著に成膜効率は向上し,30ミクロン程度の平均表面粗さで成膜効率を約60%まで向上させることに成功した. ボンドコート表面の酸化は,樹脂材料に種類により,成膜性が異なり,ポリイミドの場合には,短時間の表面酸化を施した方が成膜性が向上する傾向を示したが,フッ素系樹脂の場合には,その効果は認められなかった.表面酸化の影響に関しては,より詳細な評価が必要である.
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