研究実績の概要 |
高密度PE管の代替として採用されることが多い耐衝撃性ポリ塩化ビニル(HI-PVC)を供試材として使用し,以下の研究成果を得た. (1) 円管試験片の製作 供試材の肉厚が不均一であると,肉厚の最も薄い部位に変形が集中して,試験片に負荷できる最大ひずみ(破断限界ひずみ)が著しく低下する.従って肉厚のばらつきが±5%未満のものを厳選した. (2) 繰返し負荷-除荷試験の実施 軸圧と内圧をフィードバック制御可能な二軸バルジ試験機を用いて,9通りの線形応力経路(σφ:σθ=1:0, 4:1, 2:1, 4:3, 1:1, 3:4, 1:2, 1:4, 0:1)を負荷し,管軸方向および円周方向の真応力ー塑性ひずみ曲線の測定に成功した.各々の経路の試験は2回ずつ行い,より大ひずみ域まで測定できたものを真値として扱った.本材料の物性は,ひずみ速度及び温度依存性が大きい.最大主応力方向のひずみ速度は,負荷-除荷時ともに1×10- 3 s-1となるように,軸力と内圧の負荷速度をフィードバック制御した.温度は試験片の雰囲気を22度±2度で調整した. (3)材料モデリングおよび破断限界の測定と定式化 等塑性仕事面の形状変化(異方硬化)をモデル化するために,異方性降伏関数のパラメータを単位体積当たりの塑性仕事の関数として表現し,その形状と塑性ひずみ速度の方向の両方を,精度よく再現可能な現象論材料モデルを決定した.さらに破断時の真応力と全ひずみの測定値から,破断限界ひずみおよび破断限界応力を測定し,PE管の安全性評価のためのデータベースを構築することができた.
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