研究実績の概要 |
低pHで加水分解するVO2+イオンをZn電解液に添加すると,そのVO2+イオンが水酸化物となり,Znと共析させることができる。しかし,VO2+イオンを添加した先行研究では,V化合物はZnと共析するが,皮膜の表層に濃化し,均一には分散しないことが分かっている。そこで,本研究では,各種の電解条件下においてZn-V複合電析を行い,V化合物の分布状態を調査した。電析膜中のV含有率は浴温の低下,ポリエチレングリコール(PEG)の添加により増加した。浴温を下げるとZnの電流効率が低下しており,相対的にVの含有率が上がったと考えられる。PEGを添加すると陰極電位が分極しており,水素発生が増加するため, VO2+の加水分解反応が促進されVの含有率が上がったと考えられる。各電解条件で得られたZn-V複合電析膜の表面と断面を反射電子像とEDX により解析した。何れの複合電析膜においてもV化合物はZn層の隙間に共析した。標準電解条件(通電量100 kC/m2,浴温40 ℃,電流密度1000 A/m2)ではZnが不均一に析出しており,V化合物の分布も不均一となった。一方,浴温を20 ℃に低下させると,Zn結晶が微細化し, V化合物ができるサイト(Znの隙間)が微小, 且つ均一化してV化合物が均一に分布した。PEGを添加した場合もV化合物は,標準条件に比べ均一に共析した。PEGを添加すると電析したZnの気泡痕が減少することが報告されており,これは電極面からの水素の離脱性が増加するためと考えられる。PEG無しの溶液では,水素が同一箇所で連続的に発生しているのに対して, PEGを添加した溶液では, 水素の離脱性増加により水素の発生箇所が均一となり, その結果VO2+イオンの加水分解サイトも均一となり, V化合物が均一に分布したと考えられる。
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