研究課題/領域番号 |
21H01677
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研究機関 | 公益財団法人高輝度光科学研究センター |
研究代表者 |
一柳 光平 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 回折・散乱推進室, 研究員 (70435618)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 衝撃破壊 |
研究実績の概要 |
高い歪速度における材料の衝撃破壊の研究は、km/sのオーダーで伝搬する衝撃波が起因となる高速不可逆過程であるため可視化と定量的な計測が難しい。特に衝撃銃であればマイクロ秒で、レーザーを用いた実験になるとナノ秒オーダーの時間内でイベントが終わってしまうためプローブのパルス性が重要である。この計測困難な状況を打開すべく、放射光X線パルスを用いたシングルショット型かつ角度分散の時間分解X線回折測定法を開発し、金属・セラミックス材料の衝撃波による塑性破壊ダイナミクスで発生する転位生成・成長過程のフォノン粘性抵抗因子を明らかにすることを目的として実施した。 今年度は、角度分散型のX線回折光学系の設計開発を行った。プローブとする光源は高エネルギー加速器研究機構のPhoton Factory Advanced Ring (PF-AR)の白色X線パルスを湾曲多層膜X線ミラーにより集光照射をする。高いNAで集光するために曲率を計算し、シリコン単結晶のウエハーにRu/Cを成膜した。 また集光した硬X線パルスを用いた時間分解X線回折測定を行うために、白色ラウエ回折の時間分解X線回折測定を立ち上げ衝撃波を駆動する高強度Nd:YAGレーザーと硬X線パルスと同期システムを立ち上げ、シリコン単結晶の時間分解ラウエ回折により塑性破壊のタイミングや、衝撃波伝搬方向と伝搬垂直方向の回折点のシフト等を確認することができた。現在は、湾曲X線多層膜ミラーの試験の準備を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は、シングルショット型の角度分散時間分解X線回折測定装置のための湾曲X線多層膜ミラーの設計と、回折装置の開発と設計を行った。PF-ARのパルス幅100 ps、12 keVの硬X線パルスを集光するための曲率計算や治具などの設計を行った。当初の予定より遅れているが十分性能を満たす素子が準備できた。現在は、次のビームタイムに向けて素子の試験を準備している。 また、時間分解X線回折測定のシステムは多層膜X線素子で集光せずに白色ラウエ回折する試験を行い測定システムの確認を行った。シリコン単結晶の衝撃塑性破壊過程をレーザーパルス誘起の衝撃波で発生させ、衝撃波伝搬下のラウエ回折測定を行った。白色ラウエ回折なので格子定数変化の観測は出来なかったが弾性-塑性転移ダイナミクスを観測することが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
2年目は、高エネルギー加速器研究機構のPF-ARの時間分解X線測定ビームラインであるAR-NW14Aを用いて今年度に設計した湾曲X線多層膜ミラーの集光試験を行う予定である。12 keVのピコ秒パルスが試料位置で集光されているかをビームモニターにより確認する予定である。
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