鋼の連続鋳造用モールドフラックスの成分であるアルミノホウケイ酸(CaO-B2O3-Al2O3-SiO2)系の熱伝導度測定およびそのガラス化試料の局所構造解析を行った。また、第一原理計算を用いて構造単位の原子間の共有結合性の定量的評価を試みた。熱伝導度測定は昨年度に引き続き、1300~1500℃の温度において実施した。実験した全ての組成において温度の上昇に伴い熱伝導度が低下することが確認された。CaO濃度が高いほど熱伝導度が低くなる傾向が見られ、さらに光学的塩基度を評価したところ、光学的塩基度と熱伝導度の明確な負の相関が明らかになった。これら2つの事実は、溶融酸化物における熱伝導がフォノンの伝達によるということを示している。 局所構造解析は、1500℃で溶融した試料を急冷しガラス化したものについてMAS-NMRにより測定を行った。それにより、各試料についてB及びAl原子の各配位数の存在比やSiの架橋酸素数についての情報を得ることができ、これらの情報を元に、第一原理計算により、各結合の電子分布の平均位置から共有結合性を評価し熱伝導度値との比較を行った。 モールドフラックスの基本系であるCaO-B2O3-Al2O3-SiO2系について、局所構造と熱伝導度および熱力学的性質との関係を整理することを念頭に、昨年度より調査を開始しているCaO-SiO2-B2O3系およびCaO-Al2O3-B2O3三元系をもとに、成分のAl2O3を一部SiO2に一部置換した際の熱伝導度・各成分の局所構造の変化、同様にCaOについて調査を行った。またCaOをMgOに置換した際の影響を調査し、混合アルカリ土類効果が現れることを見出し、共有結合性を評価することによる、モデルの最適化を行った。
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