研究課題/領域番号 |
21H01690
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
渡邉 哲 京都大学, 工学研究科, 准教授 (80402957)
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研究分担者 |
宮原 稔 京都大学, 工学研究科, 教授 (60200200) [辞退]
平出 翔太郎 京都大学, 工学研究科, 助教 (60853207)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | Soft MOF / ゲート吸着 / AFM / 自由エネルギー解析 |
研究実績の概要 |
本研究では,構造柔軟性を持つ多孔性配位錯体(Soft MOF)が示す,分子吸着が誘起する構造転移挙動を対象に,速度論的特性の解析手法確立とその機構解明を目指した検討を行う。Soft MOFとしてElastic Layered MOF-12(ELM-12)を対象とした。ELM-12は層状型Soft MOFの代表例であり,銅イオンにビピリジンが配位することで形成される2次元レイヤーを,トリフルオロメタンスルホン酸(OTf)を介して分散力で積層した層状構造を有し,層間隔が開くことでゲスト分子を取り込むという構造柔軟性を示す。本年度は,AFMセル内のエタノール蒸気濃度を制御できる実験環境の構築にまず取り組んだ。エタノール蒸気は,温度制御下でのエタノール浴から発生させた飽和蒸気を窒素ガスと任意の割合で混合することにより得た。これをAFMのclosed cellに流通させることで,異なるエタノール蒸気圧下でのAFM測定を行った。流通させたエタノール蒸気は,ガスクロによるエタノール濃度の測定結果と比較し,窒素ガスとの混合割合とエタノール蒸気圧との関係を求めた。これによって,所望のエタノール蒸気圧でのAFM測定が可能となった。AFM測定から得られるforce curveを,窒素ガス環境下とエタノール蒸気下で比較すると,窒素ガス環境下では斥力が小さく,また測定を繰り返しても1回目のような斥力は観測されなかったのに対し,エタノール蒸気下では斥力は大きく,繰り返しの測定でも同様のforceが得られた。これは,エタノール蒸気下では,エタノール分子がAFMプローブにより一旦押し出されても,再度ELM-12に吸着するため,同様のforceが繰り返されたのだと考えられる。この結果は,単一の粒子に対する構造変形過程を捉えることができたことを示唆する重要なデータである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
AFM測定時の環境制御手法を構築できたため。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の成果によって,任意の圧力下におけるAFM測定が可能となった。今後は,ゲート吸着圧の前後の圧力におけるForce curveを測定しそれを積分することで,脱着過程に必要なエネルギーを求める。これを吸着等温線から得られる自由エネルギーと比較することで,測定の妥当性検証を行う。さらに,構造変化過程の動的挙動を詳細に解析することで,ゲート吸着が協働的な結晶構造転移なのか,それとも構造が部分的に逐次変形していくのか,という未解決の重要課題について検討を行う。
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