研究課題
リン脂質ポリマーや種々の脂質分子(界面活性剤も含む)からなる脂質平面膜中で形成される動的ナノ空間の生成状況に規則性があるかを検討した。炭酸脱水酵素(CAB)、リゾチウム、ならびにAβを蛍光標識し、相分離性脂質平面膜上で2次元拡散特性を追跡した結果、相境界に捕捉されることが分かった。特に液晶相から相境界に捕捉される割合がゲル相からの捕捉割合よりも大きいことが見いだされた。そして、これらのタンパク質が相境界(動的ナノ空間)を構造修復の場として利用するメカニズムを議論した。その結果、分子量(分子サイズ)や分子内水素結合安定性が動的ナノ空間への配向に関係することが示唆された。この二つの因子は、それぞれが天然状態やアミロイドを成長相として選択する因子として関わることも示唆された。アミロイドを成長相とするタンパク質について、さらにα-シヌクレイン、アポリポタンパク質、トランスサイレチンなども検討した結果、相境界がアミロイド形成のための濃縮に寄与していることが考えられた。さらに、温度変化などの界面状態の動的変化を通して動的ナノ空間が集合することにより、捕捉されるタンパク質量(吸着量)が増大し、アミロイドに成長することが分かった。逆に、動的ナノ空間の分散・消失により吸着抑制と構造修復が進むことがリン脂質ポリマーなどの一部の脂質平面膜で明らかになった。ケーススタディーは限られるが、相境界(動的ナノ空間)の生成消滅をダイナミックに制御することによる吸着抑制と構造修復の両立に目途がついた。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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BBA-Proteins and Proteomics
巻: 1872(3) ページ: 140987-140987
10.1016/j.bbapap.2023.140987