医療マテリアルの表面汚染の原因であるタンパク質吸着を抑制するべく開発されたリン脂質ポリマー材料は、タンパク質構造の崩壊抑制や修復動作を呈しない。そこで、モデル生体膜の検討を通して、リン脂質ポリマー材料の修復動作を検討した。まず相分離特性や揺らぎ構造を利用して相境界(動的ナノ空間)を制御できた。この相境界がタンパク質の吸着と濃縮の場として機能し、タンパク質の二次元拡散と会合挙動をも制御できた。その結果、成長相としての天然状態の回復、アミロイド形成、結晶成長などを誘導できた。さらに、リン脂質ポリマー材料では、制御可能な動的ナノ空間が不足していることが修復動作の障害になっていることが示唆された。
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