研究課題/領域番号 |
21H01694
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
宇敷 育男 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 助教 (30734850)
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研究分担者 |
松山 清 福岡工業大学, 工学部, 教授 (40299540)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 超臨界CO2 / 溶解度 / 多孔性配位高分子 / 金属有機構造体 / 吸着 / PC-SAFT / バルク空間物性 / ナノ空間物性 |
研究実績の概要 |
昨年度検討したZIF-8(比表面積:2000 m2/g)に引き続き,代表的なPCP(多孔性配位高分子)の一種であるMOF-177(比表面積:4000 m2/g)をモデル担体(吸着剤)としてナノ空間物性(吸着平衡)を測定した結果,超臨界含浸プロセスにおけるモデル吸着質であるヘキサンの吸着量は温度減少・圧力増加に伴い減少するという傾向が確認され,これはZIF-8を吸着剤とした場合と同様の温度・圧力依存性であった.この結果は,温度減少,圧力増加に伴いバルク相におけるCO2密度が増加した結果,PCP細孔内でヘキサンと競争的に吸着するCO2量が増加すると同時に,PCP細孔内の吸着相からバルク相への溶質の溶解性が増加しヘキサンが吸着相内に分配されにくくなった結果に対応するものと解釈できる. 一方で超臨界CO2中における溶質溶解度(バルク空間物性)については,統計熱力学に基づく摂動論型状態式であるPC-SAFT(perturbed chain-statistical associating fluid theory)に基づく溶解度推算手法(当研究グループにより開発済み)を,超臨界含浸プロセスにおけるモデル溶質であるサルサレートに対して適用した.その結果,混合系を記述するために用いるLorentz-Berthelot結合則中における溶媒-溶質間の異種分子間相互作用パラメーターkijをゼロとしても,超臨界CO2中における等温溶解度及び等圧溶解度の実験値を平均相対偏差ARD25%以内で比較的良好に再現可能であることを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
”研究実績の概要”においても述べたように,モデル溶質・モデル担体をターゲットとしたバルク及びナノ空間物性の測定や理論式によるモデリングを実施するなど,概ね研究計画通りに進行しているため.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,研究目的である超臨界含浸法プロセスの戦略的開発へ必要なバルク及びナノ空間物性の基盤構築に向けて,モデル溶質であるアセトン,トルエン等を吸着質としたナノ空間物性の測定を実施し,未だに知見が極めて乏しい超臨界CO2中における溶質のPCPへの吸着現象に関する定量的な理解を深める.同時に,昨年度までに引き続いて,モデル溶質・モデル担体をターゲットとして,分子構造を的確に表現可能な理論的状態式であるPC-SAFTや吸着ポテンシャル理論に基づく吸着モデルであるDubinin-Astakhov式等によるバルク及びナノ空間物性のモデリングも実施する.
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