研究課題/領域番号 |
21H01709
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
神谷 裕一 北海道大学, 地球環境科学研究院, 教授 (10374638)
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研究分担者 |
大友 亮一 北海道大学, 地球環境科学研究院, 准教授 (10776462)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 硝酸態窒素 / アニオン交換樹脂 / 金ナノ粒子 / 硝酸イオン還元 / 汚染地下水 |
研究実績の概要 |
Auナノ粒子を導入したアニオン交換樹脂(Au-AER)にイオン交換反応によってNO3-を取り込み、さらに水素と接触させることでAu-AERの中でNO3-が還元分解されることを報告している。しかし、NO3-の分解率が低いという問題があった。そこで本年度は、NO3-の還元分解条件(温度と時間)を検討し、NO3-分解率の向上を目指した。反応温度の上昇に伴ってNO3-分解率は上昇し、80℃で最大となった。それ以上では逆にNO3-分解率が低下した。高温ではAu-AERの含水量が低下し、それによってAu-AER中でのNO3-の拡散が抑制され、反応が進まなくなったと考えた。反応温度を80℃に固定して反応時間の影響を調べたところ、5時間の反応時間で十分であることが確かめられた。このように反応条件の最適化によってNO3-分解率を向上させることに成功した。 さらにNO3-分解率を向上させるために、AuCl4-を還元してAER中にAuナノ粒子を発生させる条件を検討した。通常、イオン交換反応によってAuCl4-をAERに導入した後に、水素気流中で加熱してAuCl4-を還元しているが、驚くべきことにこのような還元処理がなくてもAuナノ粒子が発生していた。AERのアニオン交換サイトはOH基を有しており、これが還元剤となってAuCl4-を還元していることが確かめられた。水素中での加熱処理が不要であることは、触媒調製上の大きなメリットとなる。 続いて、NO3-に対するAu-AERのイオン交換特性を詳細に調べた。予想に反してAuの導入によって最大イオン交換容量が約20%増加した。また、このときNO3-に対する親和性(吸着力)は逆に30%程度低下した。これらのことは、Au-AERではAERが元来有するアニオン交換サイトに加えてAuナノ粒子の表面もNO3-の吸着サイトとして機能することを示唆する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初に設定した3つの目的のうち、1つ目(アニオン交換樹脂へのAu粒子の高密度、均質導入と実汚染地下水の浄化)については過去2年の研究によって概ね達成している。残りの2つについても、最終年(3年目)のうちに達成可能であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
Auナノ粒子を導入したアニオン交換樹脂(Au-AER)の触媒(材料)開発は、ほぼ完了したと考えている。今後は、当初の計画に従いこの触媒を用いてNO3-で汚染された地下水の浄化を検討する。地下水にはNO3-に加えて様々な陰イオンが含まれるので、これらがAu-AERへのNO3-の取り込みとNO3-の還元分解に与える影響を調べる。 また、Au-AERに代わる新たな触媒として、層状複水酸化物(LDH)をアニオン交換体に用いた触媒(材料)開発も行う。LDHの中でFe3+を構成成分とするものはNO3-への選択性を示すことが知られており、この特性は実際の汚染地下水を浄化する際に利用できる。LDHの層間にAuナノ粒子を取り込む条件を詳細に検討し、高いNO3-除去能と高いNO3-還元分解活性を示すAu-LDHの開発を目指す。
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