研究実績の概要 |
本年度は前駆体集積法を用いて多様な複合酸化物ナノ材料の合成を試みた。その結果,ナノカーボン表面に前駆体溶液を滴下,乾燥,焼成するだけのシンプルなプロセスにて,AサイトカチオンとしてLa, Sr, Ba, Ca,BサイトカチオンとしてMn, Co, Fe, Ni, Ti, Cu, Alを含むペロブスカイト型酸化物群を合成できることを見出した。粉末X線回折測定,走査型電子顕微鏡,透過型電子顕微鏡,窒素吸着法,示差熱重量分析などにより,合成した複合酸化物のキャラクタリゼーションを行った。複合酸化物はほぼ単一相であり,いずれもナノサイズの粒子であることを明らかにした。燃焼除去するナノカーボンの形状によって,複合酸化物ナノ材料の形態(ナノ粒子状あるいはナノファイバー状)を制御できることもわかった。さらに,走査型透過型電子顕微鏡およびエネルギー分散型蛍光X線分析により,複合酸化物が形成するメカニズムを提案した。2種類以上の金属前駆体を含む溶液をナノカーボンに滴下,乾燥すると,これら異種の金属前駆体がカーボン表面でナノレベル混合する。そのため,低温焼成であっても複合酸化物が形成され,多様なナノサイズの複合酸化物を合成できると結論した。 合成した複合酸化物ナノ材料を電極触媒へと展開する研究を展開している。本年度では合成した複合酸化物ナノ材料が,水電解のアノード触媒として高活性を示すことを見出した。この高い触媒活性は合成した複合酸化物の高い結晶性とナノサイズに由来することが示唆された。
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