研究課題/領域番号 |
21H01716
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
寺村 謙太郎 京都大学, 工学研究科, 教授 (80401131)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | Agナノ粒子 / 光触媒 / CO2光還元 / 光電析法 |
研究実績の概要 |
前年度の引き続き,これまでに我々が提案している酸化物(光触媒)と金属(Ag金属ナノ粒子)の協奏効果によるH2Oを電子源とするCO2光還元の反応機構を証明するにあたって,①「一連の光触媒群の保有」,②「Ag金属ナノ粒子の合成・修飾手法の確立」,③「各種解析手法の検討」を計画した.2022年度は特に「②Ag金属ナノ粒子の合成・修飾手法の確立」に注力し,各種保護剤を使わずにAg金属ナノ粒子を光触媒上に修飾する方法について検討した.その結果,Ag金属ナノ粒子の前駆体と光触媒を同時に混合しておき,その後各種の方法でAg金属ナノ粒子の核形成・成長および修飾を同時に行うとCOへの選択性を維持したまま活性(CO生成速度)が向上することを見出した.さらなる活性向上を期待して,第二金属をAg金属ナノ粒子助触媒とともに光触媒上に修飾を行った.特に,Ag金属ナノ粒子助触媒と共にFeを担持すると,H2Oを電子源とするCO2光還元における活性を大幅に向上させることに成功した.逐次光電析法によりFeからAgへの順に担持したFe-Ag二元系助触媒修飾光触媒は,Ag金属ナノ粒子助触媒のみを担持した従来のAg金属ナノ粒子修飾光触媒に比べ,CO生成速度が2.1倍に,COへの選択率が27%から78%に向上した.光電析の間のFeの状態の変化を調べるため,X線吸収分光および透過電子顕微鏡で観察したところ,前駆体として用いた硝酸鉄(Fe(NO3)3)のFe3+が光照射によりFe2+へ還元され,このFe2+が光触媒の電荷分離によって生じた正孔によってFe3+へ再酸化される際にFeOOHとして担持されると結論した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
申請書で提案してい8ステップからなる反応機構を証明するにあたって,2022年度において全反射吸収法(Attenuated Total Reflection Infrared (ATR-IR) Spectroscopy)を用いた3相界面でのOperando計測を提案していたが,この立ち上げに時間を要しており,十分にデータを得ることができなかったため,進捗状況を「やや遅れている」とした.
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今後の研究の推進方策 |
これまでの2年間において,3つの検討事項のうち②「Ag金属ナノ粒子の合成・修飾手法の確立」についてはほぼ当初の予定を達成したと考えている.従来の含浸法,光電析法,化学還元法に加えてあらかじめAg金属ナノ粒子の前駆体と光触媒を混合しておいて還元する方法を確立することができた.一方で,提案している8ステップからなる反応機構についてより深くアプローチするため,③「各種解析手法の検討」を2022年度中に行う予定であったが全反射吸収法(Attenuated Total Reflection Infrared (ATR-IR) Spectroscopy)の立ち上げがうまくいっていない.そのため,2023年度はATR-IRでの分析に加えて合成したAg金属ナノ粒子のX線吸収測定(XAFS)を大型放射光施設SPring-8で行う予定をしている.残りの検討事項である①「一連の光触媒群の保有」についてはすでに候補となる光触媒を選んでおり,2023年度中に合成・物性評価・活性評価を終了する予定をしている.
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