我々はすでに提案している光触媒と助触媒の協奏効果によるH2Oを電子源とするCO2光還元の反応機構を証明するために,「①一連の光触媒群の保有」,「②Agナノ粒子の合成・修飾手法の確立」,「③各種解析手法の検討」を行ってきた.本年度は「①一連の光触媒群の保有」について再検討したところ,これまで我々が見出してきたH2Oを電子源とするCO2光還元に活性を示す20種類の光触媒に加えて,新たにMgをドープしたSrTiO3(Mg-STO)にAgナノ粒子を修飾するとこれまでのAlをドープしたSrTiO3(Al-STO)に比べて約2倍のCO生成速度を示すことを明らかにした.他に6種類のドーパントを検討したが,Al-STOとMg-STOのみが活性を示した.また,AlやMgのドープによってSrTiO3のバンドギャップに大きな影響はなかった. このような高い活性を得るためには,触媒調製時にAgナノ粒子と同時にコバルト種を修飾することが重要であり,CO2の還元サイトのみならずH2Oの酸化サイトの構築が重要であることが示唆された.実際,MgをSrTiO3にドープすると,Alをドープした時と同様に立方体の角が削れたような粒子形状が観察された.すなわち,ドーパントによって結晶成長が阻害されて安定な{100}面以外に{110}面が形成されたと考えられる.Agナノ粒子は{100}面に比較的多く分散され,一方でコバルト種は{110}面に多く析出されることから,{100}面と{110}面はそれぞれ還元サイトと酸化サイトとして働き,電荷分離を促進していると考えられる.さらにAgナノ粒子がCO2還元サイト,コバルト種がH2O酸化サイトとして機能するため,高い活性が得られたと結論した.今後はMg-STOについて「②Agナノ粒子の合成・修飾手法の確立」,「③各種解析手法の検討」を行う予定をしている.
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