研究課題/領域番号 |
21H01718
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
山添 誠司 東京都立大学, 理学研究科, 教授 (40510243)
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研究分担者 |
吉川 聡一 東京都立大学, 理学研究科, 助教 (80878322)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 金属酸化物クラスター / 塩基触媒作用 / 超強塩基 / サイズ制御 / 酸塩基 / 耐水性 |
研究実績の概要 |
金属酸化物の酸・塩基発現原理解明やその強度制御は触媒化学における大きな課題の1つである.本研究では,我々が見出した「バルクでは酸触媒であるニオブ酸化物の微細化による塩基触媒作用発現」を利用し,原子レベルでサイズ・構造・電子状態を制御した金属酸化物クラスターの酸・塩基性の評価を通じて,酸・塩基発現原理の解明やその強度制御法を開発する. 本年度は超強塩基性を示すNb6O19についてその超強塩基の強度や耐水性を触媒反応と量子化学計算から詳細に調べた。触媒反応において、プロトンを引き抜くpKaの異なる基質を用いてクネフェゲナール反応や縮合反応により触媒の塩基強度を調べたところ、pKaが27を超える基質でも反応が進行したことから、Nb6O19はMgOを超える超強塩基触媒であることがわかった。また、水添加実験を行ったところ、水存在下でも超強塩基反応が進行したことから、金属酸化物では極めて珍しい耐水性超強塩基触媒であることがわかった。量子化学計算から、プロトンの吸着サイトとプロトンを引き抜く活性化サイトが異なることが示唆されており、このサイトの違いが耐水性超強塩基性を生み出していると考えている。 昨年度合成したサイズの異なるニオブ酸化物クラスター触媒について、その合成法の最適化と塩基強度の調査を行った。マイクロ波合成等を用いることで、短時間で目的のクラスターを合成できることを見出した。また、合成した触媒を用いて触媒反応を行ったところ、従来法で合成した触媒より高い塩基触媒活性を示した。これはカウンターカチオンに用いているアンモニウムカチオンの分解が抑制されたためと考えている。以上より、マイクロ波合成法は本触媒を合成するのに適していると結論した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は塩基触媒作用や耐水性の機構解明を目標にしていたが、予定通りに研究を推進させることができた。また、構造の歪みと塩基強度の関係を解明できており、塩基性制御法の1つを確立できたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は価数、電気陰性度、最外殻軌道エネルギーの異なる金属イオンのドープにより、塩基点である末端酸素への電子供与と軌道の局在化、さらにHOMO軌道の高エネルギー化により、陵共有酸素へのプロトン吸着と末端酸素の塩基性の向上を図る。すでに[Nb6-xTaxO19]8-の合成に成功しており、[Nb6O19]8-を超える強塩基触媒作用を示す結果を得ている。そこで、組成(異種金属ドープ)や幾何構造(陵共有や頂点共有)の異なるクラスターを開発し、強塩基性点と水からのプロトンの吸着点を分離した高活性な耐水性超塩基触媒を実現する。 開発した耐水性超強塩基触媒の特徴を活かし、非脱水溶媒中でpKaが20以上のC-H結合活性化による炭素-炭素結合生成反応系を開拓する。pKaが20以上の炭化水素化合物やエステル、ケトン、芳香環等の官能基が付いた化合物のC-H結合を超強塩基触媒でプロトンとして引抜き、炭素-炭素結合生成反応を開拓する。これにより、塩基触媒の性能を発揮するために溶媒の脱水操作が必要、基質が活性化合物やニトロアルカン等の低いpKaのC-H結合をもつ化合物に限定、などの課題を克服した新しい塩基触媒反応系を確立する。
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