研究課題/領域番号 |
21H01722
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
太田 誠一 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (40723284)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 蛍光ナノ粒子 / 集積体 / 超マルチカラーイメージング / 画像診断 / バイオマーカー |
研究実績の概要 |
本研究では、DNAをリンカーとして用いた独自の技術により、タンパク質マーカーに結合した抗体上で蛍光ナノ粒子を集積化し、高輝度のラベル化を実現する。さらに、観察後に粒子を抗体から切り離せるよう設計を行うことで、次の標的を同様にラベル化し、一つの色を用いて複数の標的タンパク質をラベル化することを可能とする。これにより、m色の粒子を用いてn回の観察サイクルを繰り返すことで、m×n色の超マルチカラーイメージングを実現することを目指す。 昨年度の検討で、イメージング用ラベルのビルディングブロックとなる有機半導体ポリマー蛍光ナノ粒子(Pdot)の合成、及び粒子表面への一本鎖DNAの修飾方法を確立することができた。これを踏まえ2022年度は、DNAを介した細胞膜の表面マーカー上におけるPdotの集積による、高輝度ラベル化の検討を行った。まず表面マーカーCD19に対する抗体に一本鎖DNAを修飾し、修飾の成功をUV-vis、FT-IRによって確認した。続いて、得られたDNA修飾抗CD19抗体でヒトB細胞白血病細胞由来細胞株Nalm-6をラベル化した後、一本鎖DNA修飾Pdotと、両者と相補的な配列を有するリンカーDNAとを加えることで、抗体上にPdotを結合させた。このプロセスを繰り返すことで、CD19に結合した抗体上に、Pdotの集積を行った。ラベル化前後のNalm-6を共焦点顕微鏡で観察した結果、Pdotの集積回数が増えるのに伴い、細胞膜上での蛍光強度が顕著に増加していく様子が観察された。さらにフローサイトメトリーでCD19由来の蛍光強度を評価した結果、蛍光強度は集積回数の増加に伴い上昇し、3回の集積によって輝度が22倍まで上昇することが示された。粒子一つあたりの蛍光輝度自身も、従来法の蛍光色素と比べると大幅に高いため、本手法により従来法と比較して100倍以上の感度上昇が見込まれる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022度の検討で、本研究で提案するPdotのタンパク質マーカー上での集積により、従来法に比べて検出感度が大幅に向上できることが示された。これにより、従来では検出が難しかった発現量の少ないマーカーについても今後イメージングやフローサイトメトリーによる評価が可能になると期待され、疾患の早期診断などにも結び付いていく成果だと考えられる。よって研究は、順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、集積した有機半導体ポリマー蛍光ナノ粒子のToehold Displacementによる切り離しの検証、および多色化とON/OFFサイクルの繰り返しによる超マルチカラーイメージングの実証を行う。まず1色の有機半導体ポリマー蛍光ナノ粒子を用いて、抗体と蛍光ナノ粒子との間のリンカーにミスマッチ領域を新たに導入する。集積後にリンカーと完全相補のDNA配列を加えることで、Toehold DisplacementによるDNA2重らせんの組み換えで、集積した蛍光粒子が外れて蛍光がOFFになることを共焦点顕微鏡で確認する。その後、別の配列を用いて新たに有機半導体ポリマー蛍光ナノ粒子を別のタンパク質マーカー上で集積させることで、蛍光のON/OFFのサイクルが可能になるかを検証する。最後に、3色の有機半導体ポリマー蛍光ナノ粒子を用いて、ON/OFFのサイクルを3サイクル繰り返すことで、3色×3サイクル=9種類のマーカーを別々に標識できることを実証する。各サイクルごとに3色の蛍光画像を取得し、これらに疑似カラーを割り当てた後、最後に全サイクル分をマージして重ね合わせることで、超マルチカラーのイメージング画像を得ることを目指す。
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