研究課題/領域番号 |
21H01744
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
浅野 耕太 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 主任研究員 (30415640)
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研究分担者 |
Kim Hyunjeong 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 主任研究員 (00614645)
和田 武 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (10431602)
榊 浩司 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 研究グループ長 (20392615)
片岡 理樹 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 主任研究員 (20737994)
CHARBONNIER Veronique 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 研究員 (30880801)
小川 智史 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (70739101)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | エネルギー関連材料 / 水素貯蔵材料 / ナノ構造制御 / 構造解析 |
研究実績の概要 |
本研究では、再生可能エネルギー導入拡大に向けて、電力の安全・安定供給に利用する高水素密度かつ低材料コストの水素貯蔵材料を創製する。貴金属、ランタノイドおよび希少遷移金属の使用から脱却し、MgH2およびYH3といった水素の高密度貯蔵に有望である金属水素化物の課題であった高い反応温度を低下させるべく、非混合性の異種金属との複合化をナノスケールで進める。金属水素化物の熱力学的な安定性を制御する鍵は、構造のひずみあるいは変化にあり、ナノスケール化による界面または表面の原子配列に起因した内部応力の発生を利用する。研究代表者ら独自の材料創製法を駆使することで、それらの界面および表面の構造、形状にバリエーションをもたせ、熱力学的安定性の評価と先端的構造解析およびシミュレーション技術を併せることで、目的とする材料と水素の反応温度低下を実現する。 2021年度はまずMg-Mn系薄膜合金試料を用いた水素吸蔵放出反応評価により、本開発中の材料の反応温度低下の見通しを立てた。その結果、Mgサイズのナノスケール化により起こるMgH2の不安定化は低温ほど顕著になり、常温付近では最大で2.5桁程度の水素放出圧力の上昇が示唆された。これは従来のMg系材料に比べて水素放出反応温度を100℃程度以上低下できることに相当するため、薄膜よりもスケールアップした合金試料についてもMgとMn等の遷移金属の混合を原子スケールで進めれば、これと同等以上の性能を引き出せる可能性が示された。粉体合金試料についてMgとMnの混合状態を調べた結果、メカニカルアロイング法による機械的混合に起因して、Mn中のMgは平べったい形状をもち、さらなるサイズ縮小が必要であることが分かった。さらに名古屋大学のガス中蒸発法によるナノ粒子、東北大学の金属溶湯脱成分法によるバルク体試作をそれぞれ行い、現在はその水素吸蔵放出性評価を実施中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Mnを中心とした遷移金属とMgの混合試料について、産総研では薄膜試料を用いた反応温度低下の見通しと、粉体試料の構造評価を実施し、目標とするMgH2の不安定化を進めている。また、名古屋大学のナノ粒子、東北大学のバルク体試作についても順調に進み、現在はその水素吸蔵放出性評価を実施中であり、順調な進捗と判断される。さらに産総研において、Zrを添加したYH3が不安定化することも示された。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度初頭は東北大学が金属溶湯脱成分法により作製したバルク体試料について、その水素吸蔵放出性の評価を開始したところである。バルク体試料の金属組成はいくつか異なるものを準備していたため、それらの組成と構造、MgH2の反応温度の関係を明らかにしていく。また、得られる結果を基に産総研での薄膜および粉体試料作製条件にフィードバックすると共に、原子スケールでの構造評価には名古屋大学がガス中蒸発法にて作製したナノ粒子の評価結果も併せて議論する計画である。
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