研究課題/領域番号 |
21H01751
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
保田 諭 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 先端基礎研究センター, 研究主幹 (90400639)
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研究分担者 |
福谷 克之 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (10228900)
矢野 雅大 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 先端基礎研究センター, 研究職 (30783790)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | グラフェン / 水素同位体効果 / トンネル効果 / 水素ポンピング |
研究実績の概要 |
本研究では、二次元薄膜を電極材料に用いた固体高分子形電気化学セルによる重水素濃縮分離デバイスを開発し、二次元薄膜を用いた水素同位体分離の学理の発展だけでなく、室温・大気圧での重水素の低コスト製造法の知見を得ることを目的とする。本年度は、電気化学活性な水素透過金属膜と、分離能向上のカギとなる水素同位体のトンネル効果を制御可能な二次元薄膜を組み合わせたヘテロ電極触媒を創製することを行った。 水素透過金属膜にパラジウムを用い、二次元薄膜にグラフェンを用いたヘテロ電極触媒を固体電解質膜上に作製した膜電極接合体をセルに組み込み、水素ポンピング法により水素同位体分離能について評価を行った。具体的にはパラジウムーグラフェンヘテロ電極をアノード極にし水素同位体ガスを供給して水素酸化反応を誘起する。生成した水素同位体イオンは固体電解質膜内を拡散しカソード極の白金微粒子電極で還元反応により、再び水素同位体ガスに戻り放出される。この反応過程で、アノード極から軽水素イオンが選択的に固体電解質膜内に放出されるのを見出した。また、印加電圧による分離能依存性について評価した結果、電圧が低い場合には高い軽水素イオンの選択性を有し、電圧を高くするにつれ選択性が減少するのを明らかにした。理論計算の結果、電圧が小さい場合ではパラジウム膜とグラフェン膜界面で生成した水素同位体イオンがグラフェン膜を透過する過程でトンネル効果が支配的になるため大きな水素同位体効果が発現すること、電圧が大きい場合ではグラフェン膜の透過の活性化エネルギーも低下するため、熱励起による活性化障壁を超えるホッピング伝導が支配的になるため分離能も低下することが示された。以上、グラフェン膜を利用することでトンネル効果による高い水素同位体分離能を発現できることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、二次元薄膜であるグラフェンのトンネル効果を利用することで大きな水素同位体分離能が発現可能であることを示すことができたため、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
次年度ではこれまで得られた知見を基に、グラフェン以外の二次元薄膜材料を用いたときの水素同位体分離能を評価する。また、二次元薄膜材料に単原子レベルの空孔や異種元素のドーピングを行い、イオン透過の活性化障壁の変調によるトンネル効果の制御を試み、分離能が最適化された重水素濃縮能デバイス作製の基礎的知見を得る。
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