研究課題/領域番号 |
21H01758
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
原野 幸治 東京大学, 総括プロジェクト機構, 特任准教授 (70451515)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | カーボンナノチューブ / 透過電子顕微鏡 / 動画撮影 / 構造決定 / ナノ材料 / 炭素材料 / 画像解析 |
研究実績の概要 |
本年度は,高速動画撮影によるカーボンナノチューブの構造決定に向けた基盤技術となる,透過電子顕微鏡像における像コントラストの定量化を実施し,およびこれを発展させ,透過電子顕微鏡によるナノ材料観察で普遍的に利用可能な「透過電子顕微鏡像と分子構造をつなぐ原子番号相関分子模型」の提案を行った. 近年の電子顕微鏡技術の発展により,原子や分子,さらにはその集合体の動きや反応をあたかも分子模型をみるがごとくに観察することが可能となった.しかし、実際に実験で得られた電顕像を模型で描き出そうとすると,化学者が慣れ親しんだ球棒あるいは空間充填模型から予想されるものとは大きく異なる.これは,空間充填模型は原子の電子雲の広がりを反映した模型であるのに対し,電子顕微鏡像にあらわれる原子像の濃さはその原子の原子番号(Z)に依存したものになるからである.この不一致が分子科学における原子分解能電顕の普及を妨げていた.本研究では我々は,電顕像シミュレーションを用いた検討により、電子線量に応じた画像ノイズを考慮すると,電顕像において視認される原子サイズが原子番号に強い相関を示すことを発見した.これに基づき,原子分解能透過電子顕微鏡で撮影した分子像の特徴を正しく反映する新しい分子模型として,電顕像シミュレーションを用いて決定した原子番号に依存した原子像半径を表示半径に用いた「原子番号相関模型(ZC model)」を新たに提唱した.この模型を用いる事で,ひとつひとつの有機分子像から,ゼオライトや塩化ナトリウムのような無機物の固体まで,様々な物質の電顕像を模型で再現することが可能となった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要欄で述べたZC模型の提案により,カーボンナノチューブをはじめとするナノ材料の電子顕微鏡像からシミュレーションを介することなく構造を推定することが可能となり,今後の研究を加速させる準備が整った.
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今後の研究の推進方策 |
当初研究予定通り,カーボンナノチューブ試料の高速動画の各フレームを自動的に処理しSN比を向上させるアルゴリズム開発を行い,個々のカーボンナノチューブのカイラリティ決定を実現する.さらに,純粋なカーボンナノチューブのみならず他のチューブ状ナノ材料(窒化ホウ素ナノチューブなど)やそれらの化学修飾体への応用も視野に入れる.
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