研究課題
本研究では、カーボンナノチューブの側面化学修飾を行い、局所的にπ電子共役系を変調することで局所的にバンド構造を制御し、広範囲に渡り近赤外発光波長を選択的に発現する方法を開発した。また、カイラル指数に基づいて、カーボンナノチューブ付加体を分離精製することによって、構造の異なるカーボンナノチューブに及ぼす化学修飾の影響を評価した。カイラル指数の異なるカーボンナノチューブを用いる効果として、励起波長の選択肢が広がること、元々の発光波長が異なることから、化学修飾後の発光波長の選択肢も広がることが期待される。アルキルリチウムを用いた化学修飾法では、トリフルオロ酢酸あるいはハロゲン化アルキルを組み合わせることで、異なる波長の近赤外発光を発現できることを見出した。モデル分子を用いた理論計算の結果は、熱力学的に最安定な付加様式が付加基によって異なること、付加様式の違いによってバンドギャップが異なることが見出された。ゲルクロマトグラフィによる、カイラル指数に基づく分離精製を行ったところ、カイラル指数に寄らず、反応方法によって発現する発光波長を制御できること、発光波長の変化量の大きさは直径に反比例することも明らかとなった。このように、付加基の立体効果の重要性を実証し、付加基の組み合わせで発光波長を切り替える方法論を構築することができた。反応点を2つ有する反応試薬について、反応活性点のリンカーとなる構造の評価を行い、選択的に長波長側の発光を発現するためのリンカーの長さについて明らかにした。さらに、フルオロアルカンとの付加反応を検討したところ、980 nmに固有の発光を有する(6,5) CNTから、1320 nmに至る発光を選択的に発現することに成功した。これまでで最長の発光波長の発現であるだけではなく、光通信に適した発光波長域まで拡張することができたことから、大きな波及効果が期待される。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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