研究実績の概要 |
3次元に積層した単層グラフェンにおいて、本来の物性を著しく変質させる層間相互作用を積層グラフェンの層間へのスペーサ挿入による層間隔拡大や、ランダム積層構造の形成によって抑制することが目的である。その目的に向けて、以下の研究項目について進捗させた。 ・構造制御酸化グラフェン(GO)のスケーラブル合成とデバイス展開:様々な酸化度やサイズのGOに対して乾燥法(凍結乾燥、スプレードライ、急速加熱、マイクロ波加熱など)や還元処理を検討し、アスコルビン酸をGO層間に結合させつつ、還元剤として作用させることにより、高い比表面積の3次元グラフェン構造体の構築を可能とした。 ・滴下法による層間カップリング抑制グラフェン作製と物性解析:GOとスペーサ材料(CNT,ナノダイヤモンド)の交互滴下法による薄膜形成の最適化を推し進め、光学測定が可能なサイズの試料を作製した。得られた多層グラフェン薄膜試料の光吸収を紫外・可視~中赤外の広帯域で計測した。その結果、近赤外よりも高エネルギー領域では吸光度が一定であることや、低エネルギー領域ではドーピングにより吸光度が減少するが、フェルミ準位の制御により回復可能であることを見出した。 ・転写法によるスペーサ導入グラフェン形成:層数を正確に制御して高結晶性グラフェンを積層するため、CVD法で作製した単層グラフェンとスペーサ材料を転写法で交互積層する手法を検討した。GOと同様に層間相互作用の抑制観測に加えて、スペーサ間距離と積層構造の安定性との関係を分子動力学計算の結果も踏まえて明らかにした。 ・スペーサ導入3次元積層グラフェンの歪センサ応用:NDやCNTを添加したGOの熱処理により3次元グラフェンを形成し、弾性変形時の電気抵抗変化を利用した歪センサ動作特性を解析した。GOのみの場合と比較してスペーサの導入により感度や耐久性が著しく向上することを示した。
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