研究課題/領域番号 |
21H01767
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
小松 晃之 中央大学, 理工学部, 教授 (30298187)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ウイルス / 蛋白質 / マイクロチューブ / 光重合 / 白金ナノ粒子 / ウイルス形状ナノ粒子 / カタラーゼ |
研究実績の概要 |
中空シリンダー構造のマイクロチューブは、内孔・管壁・外表面に異なる機能を付与できるため、その精密合成と応用に注目が集まっている。研究代表者は多孔性ポリカーボネイト膜を用いた独自の鋳型内交互積層法により、中空シリンダー構造の蛋白質マイクロチューブの一群を合成し、そのユニークな分子捕捉能や触媒能を明らかにしてきた。本研究は、水中で自走しながらウイルスを捕集する蛋白質/高分子ハイブリッドマイクロチューブモーターの合成に挑戦する。鋳型内光重合法と鋳型内交互積層法を組合わせ、均質で分散性に優れたマイクロチューブを効率高く合成する。さらに外表面に蛋白質を結合し、動きながらウイルスやウイルス形状ナノ粒子を捕集できる革新的マイクロシリンダーとして完成する。 ①各種蛋白質/高分子ハイブリッドマイクロチューブモーターの合成 内孔表面に白金ナノ粒子(PtNP)を担持した高分子マイクロチューブの調製を完了したので(2021年度)、引き続き外表面にフェチュインを結合した蛋白質/高分子ハイブリッドマイクロチューブ(Fet/PtNP)を合成した。さらに、内孔壁の白金ナノ粒子をカタラーゼに変換したマイクロチューブも合成した。得られたマイクロチューブモーターが過酸化水素水溶液中で酸素バブルを噴出しながら自走することを明らかにした。 ②インフルエンザウイルス形状蛍光ナノ粒子の合成 インフルエンザウイルスの表面にはスパイク蛋白質ヘマグルチニン(HA)が突出しており、それが宿主細胞表面にあるシアル酸を認識・結合することで感染が始まる。蛍光ポリスチレンビーズ(粒径100nm)の表面カルボキシル基にニッケル(ニトリロ三酢酸)錯体を結合し、His-tag-HAを混合する方法により、表面にHAを固定したインフルエンザウイルス形状蛍光ナノ粒子を合成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
計画に従い実験を順調に遂行し、2022年度の目標であった「各種蛋白質/高分子ハイブリッドマイクロチューブモーターの合成」、「インフルエンザウイルス形状蛍光ナノ粒子(HA-FNP)の合成」の2項目を達成することができた。蛍光ナノビーズ上にヘマグルチニン(HA)蛋白質を錯形成で固定する条件検討に多くの時間を要したが、系統的に実験を進め、ナノ粒子1個当たりのHA結合数も定量した。また、HA-FNP表面の形状をクライオ電子顕微鏡で観察することもできた(ドイツのグループと共同)。
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今後の研究の推進方策 |
①カタラーゼを内孔壁に結合したマイクロチューブモーターの自走能の解析 内孔壁の白金ナノ粒子をカタラーゼに変換したマイクロチューブを合成し、それが過酸化水素水溶液中で自走することを明らかにした(2022年度成果)。その研究途中、偶然にも このチューブが光照射時にだけ加速することを見出した。光の ON/OFF に応答して可逆的であることもわかった。光照射による自走速度の調節が可能となれば、マイクロチューブモーターの応用範囲はさらに広がると考えられる。本現象について詳しく検証し、そのメカニズムを解明する。 ②インフルエンザウイルス形状蛍光ナノ粒子捕集能の解析 外表面にフェチュイン蛋白質、内孔壁に白金ナノ粒子を固定したマイクロチューブの過酸化水素水分散液に、インフルエンザウイルス形状蛍光ナノ粒子(HA-FNP)を添加し、自走するマイクロチューブによるHA-FNPの捕集能を解析する。粒子表面に固定したヘマグルチニン(HA)がフェチュインのシアル酸を認識するため、チューブは自走しながらHA-FNPを捕集する。遠心分離によりマイクロチューブを除き、上清の蛍光スペクトル測定から捕捉率を算出する。 3年間で得られた成果を取りまとめ、狙った分子を効率よく捕捉できる「蛋白質/高分子ハイブリッドマイクロチューブモーター」の基礎科学を確立するとともに、応用への道筋を示したい。
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