中空シリンダー構造のマイクロチューブは、内孔・管壁・外表面に異なる機能を付与できるため、その精密合成と応用展開に注目が集まっている。研究代表者は多孔性ポリカーボネイト膜を用いた独自の鋳型内交互積層法により、中空シリンダー構造の蛋白質マイクロ・ナノチューブの一群を合成し、そのユニークな分子捕捉能や触媒能を明らかにしてきた。本研究は、水中で自走しながらウイルスやウイルス形状ナノ粒子を捕集する蛋白質/高分子ハイブリッドマイクロチューブモーターの合成に挑戦する。均質で分散性に優れたマイクロチューブを効率高く合成し、動きながらウイルスやウイルス形状ナノ粒子を捕集できる革新的マイクロシリンダーとして完成することを目標とした。 ①カタラーゼを内孔壁に結合したマイクロチューブモーターの自走能の解析 カタラーゼを内孔壁に結合したマイクロチューブは過酸化水素水溶液中で自己推進するが、偶然にもこのチューブが光照射の ON/OFF に応答して可逆的に加速・減速する現象を見出した。管壁内に導入した酸化鉄ナノ粒子の光熱効果により、カタラーゼの活性が変化するためであることを明らかにした。 ②インフルエンザウイルス形状蛍光ナノ粒子捕集能の解析 外表面にフェチュイン蛋白質、内孔壁に白金ナノ粒子を固定したマイクロチューブの過酸化水素水分散液に、インフルエンザウイルス形状蛍光ナノ粒子(HA-FNP)を添加すると、自走するチューブがHA-FNPを効率よく捕集することを見出した。粒子表面に固定したヘマグルチニン(HA、インフルエンザウイルスのスパイク蛋白質)がフェチュインのシアル酸を認識するためであることを実証した。 3年間の成果により、狙った分子を効率よく捕捉できる「蛋白質/高分子ハイブリッドマイクロチューブモーター」の基礎科学を確立することができた。
|