研究実績の概要 |
初年度は第一原理計算によるトポロジカル物質の特異な縮退バンド構造と輸送現象に関する系統的な研究を実施し、ワイル磁性半金属として知られるCo3Sn2S2に対するInドープの効果と異常ホール・異常ネルンスト効果の解析、ディラック反強磁性体として知られるCuMnAsのスピンホール効果と磁場有起異常ホール効果の解析に関して、論文を出版している[Yanagi et al, Phys. Rev. B 103, 205112 (2021), Huyen et al., Phys. Rev. B 104, 035110 (2021)]。 Co3InxSn2-xS2の研究では、仮想結晶近似によるInドープ依存性の計算を行うことで実験結果を良く再現できることを示し、Inドープによるシフトに伴って異常ネルンスト効果をさらに増強することなどを提案している。反強磁性ディラック反強磁性体MnCuAsの研究では群論による高対称磁気構造の生成手法と第一原理計算から予測される安定な磁気構造が実験から決定されている磁気構造と一致することを示し、第一原理計算によるスピンホール効果の計算から、その反強磁性秩序における大きなスピンホール効果の発現を予測している。さらに、詳細な電子構造の解析から、その巨大スピンホール効果の発現が、フェルミ準位近傍のノーダルラインのスピン軌道相互作用による分裂から生じる寄与によって説明されることを示している。 また、本研究プロジェクトで活用する結晶対称性を活用した高対称磁気構造のスクリーニングシステムの基盤理論である、クラスター多極子法を有限伝搬ベクトルで特徴づけられるより広範な磁気構造を扱えるように拡張し、実際の磁性体に対する磁気構造と輸送現象の解析などを実施した上で、論文を執筆している(Yanagi et al., arXiv:2104.13704(2021))。
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