研究課題
本研究の目的は、剥離法により得られるMoS2の単結晶表面上に作製した電気二重層トランジスタ(EDLT)やNbSe2単結晶剥離膜を用いて、乱れが極限的に少ない完全2次元超伝導体の量子ゆらぎに支配された超伝導物性(磁束の量子ダイナミクス、静的・動的相転移)を明らかにすることである。2023年度は、前年度不具合のあった試料作製工程の再検討を行い、LEDフォトリソグラフィ後わずかに残るレジストが超伝導化に悪影響を及ぼすことを突き止め、この問題を解決した。作製した2次元極限のMoS2-EDLT(超伝導転移温度:8K)を用いて、ゼロおよび磁場中の広い電流領域における輸送特性を集中的に測定した。磁場中における電気抵抗転移はこれまでと同等の結果となった。ゼロ磁場の電流電圧特性においては、7Kにおける渦-反渦(BKT)転移後の低電流領域の非線形べき数が、低温で熱的なモデルからずれる飽和現象を観測した。これは当初予測した、渦-反渦励起の起源が量子揺らぎへとシフトするダイナミクスの変化と解釈される。一方、予想していなかった現象として、高電流領域で電圧が多段の不連続な飛びを示しながら常伝導へ転移する特徴的な動的転移を新たに見出した。この現象は電流誘起の位相スリップ状態への遷移によるものと解釈できる。同現象は磁場中では観測されないこと、さらに量子揺らぎ効果を示す比較的厚いNbSe2剥離単結晶でも観測されないことから、極限的に薄い2次元系のゼロ磁場近傍のみに現れる動的特性であると結論した。以上の結果よりMoS2-EDLTの超伝導に関する温度-磁場-電流相図を作成した。これに加えMoS2と同様なファンデアワールス結晶であるリン化ヒ素の組成変化と圧力印加を組み合わせたフェルミ面制御により3次元的な厚さを持つバルク中に、2次元的超伝導状態を引き起こせることを共同研究により明らかにした。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件)
Science Advances
巻: 9 ページ: eadf6758-1-10
10.1126/sciadv.adf6758