研究課題/領域番号 |
21H01794
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
横内 智行 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (20823389)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | スキルミオン / ニューロモルフィックデバイス |
研究実績の概要 |
本研究は、トポロジカルなスピン構造であるスキルミオンがしめすダイナミクスを用いた高性能・低消費電力なニューロモルフィックデバイスの実現を目指している。 本年度は、まずスキルミオンダイナミクスを実空間で観察するための磁気カー顕微鏡とスキルミオンダイナミクスを電気的に測定するための測定系を新たに立上げた。そして、スキルミオンのニューロモルフィックデバイスへの応用を念頭に、交流磁場を印可した際のスキルミオンダイナミクスを、実空間観測および電気測定を組み合わせて行うことにより詳細に調べた。そして、特定の周波数・振幅においてニューロモルフィックデバイスに適したダイナミクスを示すことが明らかになった。その後、得られた知見をもとに、ニューラルネットワークモデルの一つである、リザバー計算モデルに基づいた、スキルミオンニューロモルフィックデバイスを作成し、性能評価を行った。そして、典型的なベンチマークの一つである、手書き数字認識で95%に近い正答率を示すことが明らかになった。この認識率は、従来のリザバーデバイスに匹敵または超える高い値である。このことは、スキルミオンがニューロモルフィックデバイスの応用において高い潜在能力を有していることを示している。 さらに、スキルミオン以外のトポロジカル物質においてもニューロモルフィックデバイスへの応用を検討するため、複数の物質において、基礎物性や非線形現象の開拓・その起源の解明にも取り組んだ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は、新たに立上げる磁気カー顕微鏡の主要部品の納期遅延というトラブルはあったものの、装置の立上げ後は順調に研究が遂行できた。特に、当初の計画の一つであった、スキルミオンダイナミクスの詳細な測定をすることができた。さらに、その結果をもとにして、当初の計画を前倒し、実際にスキルミオンニューロモルフィックデバイスを作成し、性能評価を行うことができた。今回作成したデバイスは、当初の予定より単純な構造であるにもかかわらず、得られた認識率は当初予想していた値よりも高いものである。 さらに、当初の研究計画にはなかった、スキルミオン以外のトポロジカル物質のニューロモルフィックデバイスへの応用を検討するための、基礎物性開拓もおこなうことができた。これらの理由により、当初の計画以上に進展しているとえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、昨年度に得られた結果に基づき、さらなる研究を発展させていく。昨年度はスキルミオンダイナミクスの駆動源として磁場を用いたが、応用・省エネルギー性の観点からは、電流により類似のダイナミクスを誘起できることが望ましい。そこで、電流に対するスキルミオンダイナミクスを詳細に調べ、電流誘起スキルミオンダイナミクスに基づいたニューロモルフィックデバイスの可能性を検討する。 さらに、デバイス構造についても、昨年度は非常に単純な構造のものであった。そこで、手書き数字認識以外のさらに複雑な実用的な課題を実行できるニューロモルフィックデバイスを実現すべく、さらなる性能向上に向け、デバイス構造の改良を目指す。 また、昨年度から開始した、スキルミオン以外のトポロジカル物質のニューロモルフィックデバイスへ応用の可能性についても、さらに研究を推進する。
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