2022年度までの研究で、時間依存した磁場を印可した際のスキルミオンダイナミクスが、ニューロモルフィックデバイスの一種である物理リザバーデバイスに適したダイナミクスを示すことを明らかにし、実際にスキルミオン物理リザバーデバイスを用いて手書き文字認識という実用的なタスクができることを実証した。 一方で、上記の研究で用いたデバイスでは、異なる値の静磁場を印加したデバイスを大量に用意する必要があるという欠点がある。そこで、2023年度は、この欠点を克服したデバイスの作成と評価に取り組んだ。具体的には、磁気カー効果顕微鏡により、スキルミオン薄膜における局所磁場を測定することで、一つの静磁場の値で、リザバー計算を実現できることを明らかにした。将来的には、磁気トンネル接合素子により、局所磁場を読み取ることで、デバイス化が可能であると考えられる。 加えて、スキルミオン物理リザバー計算デバイスに最適な構造・物質の探索にも取り組んだ。これまで、本研究課題では薄膜における二次元スキルミオンを対象にしてきた。一方で、物理リザバー計算に複雑性が重要という観点からは、バルク物質における3次元スキルミオンをリザバー計算に用いると、スキルミオンが持つ三次元的な自由度により、複雑性が向上し、物理リザバー計算の性能が向上すると予想される。そこで、バルクスキルミオン物質においても、物理リザバー計算が可能であるかを検証した。 加えて、2022年度に発見した、反強磁性体における非線形伝導現象の起源の解明にも引き続き取り組んだ。
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