研究実績の概要 |
結晶性向上の可能性を探るために、昨年度の研究でAs再蒸発の抑制に効果があることを見出したBキャップ法を用いて、いくつかの方法で薄膜作製を行った。低温でBとAsを蒸着しBキャップを堆積した後に様々な条件で高温アニールを行った。高温アニールには、真空槽外に取り出した試料を石英ガラス管に封かんして電気炉でアニールするex-situ法と、真空槽内でそのまま高温アニールするin-situ法を試みた。Ex-situ法には長時間の熱処理が可能であるという利点があるが、結果的には試料表面が荒れた不均一な薄膜が得られた。これは、封管の際の真空度に起因していることが考えられ、この系が残留ガスと容易に反応することを示唆している。一方、in-situアニールでは、GaAs(100)基板を用いた際に、600℃以上で高Asフラックス雰囲気中でのアニールを行った薄膜のX線回折(XRD)の結果に、基板由来とは異なるブロードなピークが見られた。様々に検討した結果、このXRDピークの起源は基板との反応により形成された(Ga,B)Asの可能性が高いことがわかった。この場合、成膜方向に組成傾斜があり、ピーク位置から計算して最大でBAsが60%程度混晶していると考えらえる。したがって、さらに成膜を続けることで、最終的にはほぼBAs組成の層が得られる可能性があることがわかった。一方、これと並行してこれまでとは発想を転換して比較的Asフラックス・高温領域で直接成長による相形成も試みた。その結果、GaP(100)基板上に成膜したときにXRDピーク強度が増大した。また、顕微ラマンで様々な場所で測定した結果、部分的にBAsで期待される波数でピークを持つスペクトルが得られた。均一性にはまだ課題はあるものの、将来的にはBキャップ法を用いなくても目的相を形成できる可能性があることが分かった。
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