研究実績の概要 |
これまで基礎的な薄膜合成と二酸化スズ(SnO2)との混晶作製を行ってきたルチル構造二酸化ゲルマニウム(r-GeO2)について、最終年度としてp型の伝導性制御の可能性とショットキーバリアダイオードの試作を行った。SnO2とr-GeO2の混晶では高Sn組成になると価電子帯の頂のエネルギー位置が下がり、酸素の2p軌道に重なる事でp型伝導が困難になると予測される。そのため、p型伝導を発現させるためには別のルチル構造酸化物との混晶が必要であると考え、価電子帯の頂のエネルギー位置がr-GeO2に近い酸化チタンを選択した。Ti原料を少量混入させた原料溶液を用いて製膜を行い、X線回折測定装置を用いて測定したところ薄膜結晶に由来するピークが得られず、アモルファスであった。しかしながら、Hall効果測定装置を用いてVan der Pauw法による直流磁場測定を行ったところ、室温において正孔濃度(cm-3)が10の18乗台のp型伝導が確認された。 一方で、SnO2とr-GeO2の混晶である(Ge,Sn)O2を用いたショットキーバリアダイオードの作製を行った。ミストCVD法を用いてルチル構造酸化チタン(r-TiO2)基板上に、薄膜中のSn混晶比が0.51となる(Ge,Sn)O2薄膜を作製した。得られた薄膜はHall効果測定よりn型伝導を示した。オーミック電極にチタン(Ti)/金(Au)、ショットキー電極としてプラチナ(Pt)を用いた横方向のショットキーバリアダイオードにおいて、10の4乗台のON/OFF比(±5V)が得られ、ルチル構造酸化チタンスズ((Ge,Sn)O2)薄膜のショットキーバリアダイオード動作を確認した。この結果は将来的なルチル構造二酸化ゲルマニウム(r-GeO2)デバイス実現に向けた重要な成果となった。
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