研究課題
TiO2(110)-(1x2)表面におけるNC-AFM高分解能測定に関しては、TiO2(110)-(1x2)表面上に存在する局所構造のうち、[001]方向に生じる線欠陥は水との反応性がなく、非常に得意な性質を示す。そこで、ケルビンプローブ力顕微鏡をこの表面で行った結果、周辺よりも負に帯電している傾向があり、その影響は最隣接するダイマー列にまで及んでいることがわかった。線欠陥は酸素が抜け出たか配置が変化することで生じていると考えており、現在A01班が第一原理計算によって確認を行っている。アナターゼ型TiO2の光触媒効果との比較を調べるために、高速AFMによるSrTiO3(100)表面の光触媒測定を行った。SrTiO3(100)表面に表面に脂質二重膜を展開し、紫外線を導入して高速AFM測定しながら脂質が分解されるのを確認した。その結果、SrTiO3とTiO2ではどちらも脂質の分解速度にばらつきがあることがわかり、その速度分布は両者ともにほぼ同じで違いを明確にできなかった。分解する対象である脂質二重層の種類を変えることで、光触媒の分解がOHラジカルによる脂質ラジカルの生成によることであると確認できた。さらに、アナターゼ型TiO2との比較対象として、TiO2(001)の清浄化過程の解明とSTM高分解能測定を行った。TiO2(001)はこれまでの研究では様々な構造が現れることがわかっている。詳細に温度に対する清浄化の過程を調べた結果、約1000度までのアニールでは平坦なパッチワーク型の清浄表面が現れるのに対し、1000度以上では[100]方向や[010]方向に沿った列構造が現れ三次元成長することがわかってきた。
2: おおむね順調に進展している
上記以外の成果としては、(1)X線光電子分光によるルチルおよびアナターゼ表面のガス反応性のリアルタイム測定、(2)局所的な電子状態を調べることができる新規のAFMの開発、(3)機械学習を用いた熱ドリフト完全補正走査プログラムの開発、(7)電源ノイズ低減システムの開発、などを行った。よって、おおむね順調に進展していると考えている。
高速AFMによる光触媒材料に関しては、実験環境が整いつつあるので、さらに様々な材料観察を行う予定でいる。具体的には、TiO2のアナターゼ型とルチル型との反応性の違い、AuやPtで担持した表面の光触媒ダイナミクスの観察を行う。また、X線光電子分光によるルチルおよびアナターゼ表面のガス反応性のリアルタイム測定も引き続き行う。
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