研究課題/領域番号 |
21H01820
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
松本 宏一 金沢大学, 数物科学系, 教授 (10219496)
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研究分担者 |
齋藤 明子 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 磁性・スピントロニクス材料研究拠点, 主席研究員 (20426612)
沼澤 健則 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 技術開発・共用部門, NIMS特別研究員 (30354319)
阿部 聡 金沢大学, 数物科学系, 教授 (60251914) [辞退]
神谷 宏治 国立研究開発法人物質・材料研究機構, エネルギー・環境材料研究拠点, グループリーダー (70549154)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 水素 / エネルギー効率化 / 熱工学 / 磁気冷凍 |
研究実績の概要 |
水素エネルギーを利用する社会の実現が近づいている。液体水素は水素の貯蔵や輸送形態に有利であり、さらには超伝導技術との融合により、高効率な電力伝送にも活用できる。一方、液体水素を生成するには所定のエネルギーの投入が必要となるため、これに見合う高効率な冷凍技術が鍵となる。申請者らはこれまでに水素磁気冷凍というジャンルを日本で確立してきた。要素研究である、磁性体開発・熱力学サイクルの研究から液化の実証に成功してきた。この過程で、実用冷凍機の実現には、巨大磁気熱量効果を示す磁性体が必要であり、一次相転移磁性体の最適化が有望であることが明らかになった。 令和4年度では、ErCo2, HoCo2の一次転移磁性体以外のRNi2, RAl2系列の熱伝導、電気伝導測定を行い、輸送特性から磁気冷凍用磁性材料の適性を評価した。具体的には磁気冷凍サイクルの磁場変化周期や熱交換時間と得られた熱伝導率を用いて、磁気冷凍用磁性材料の具体的なサイズの検討をおこなった。また、磁場変化時における渦電流発熱を電気伝導率から計算し、熱伝導から要請される磁性体サイズでは冷凍性能に与える影響は非常に小さいことを明らかにし、学術論文で発表した。一次転移磁性体の磁気熱量効果やエントロピー特性を用いて、小型磁気冷凍試験機での性能をサイクルシミュレーションにより解析し、液化冷凍サイクルが可能なことを示した。これら成果について、学会発表をおこなった。試験冷凍機での液化実証に成功し、論文発表を行うともにプレスリリースを行ったが、新聞に取り上げられるなどの成果があった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一次転移材料の合成としては、一部磁性体の合成品位が十分でないことがあり、作成方法の詳細を検討する必要があった。しかし、作成された試料の評価から研究方針の妥当性は確認された。 一方、同じLaves相の磁性体について磁気特性のみならず輸送特性を評価し、冷凍サイクルで用いられる磁気冷凍材料としての性能を評価を行い、優れた特性であることを明らかにし、成果発表した。 また、研究対象としている系では磁場中電気伝導率測定によって、磁気熱量効果を推定できることなどが明らかになりつつある。また、得られた磁気熱量効果の結果を用いたサイクルシミュレーションにより解析し、液化冷凍サイクルが可能なことを示し、冷凍試験の実施も開始した。 以上を総合し、磁性体合成についての評価を考え、おおむね順調 とする。
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今後の研究の推進方策 |
磁性体作成の方針は確認できたので、令和4年度はコロナ禍の沈静化が見られるので、物質・材料研究機構に滞在して多くの試料合成と評価を進める。さらに、 実用材料材料として重要な試料形状の球状化という合成方法も確率されつつあるので、実用材料という観点からの特性評価を引き続き進める。 磁性体の輸送特性評価法が確立されたので、熱サイクル運転上の特性を評価することを進める。特に、電気抵抗率と比熱の関係が明らかになりつつあるので、磁気熱量効果の新しい評価方法として研究を進める。 新しい熱サイクル解析シミュレーションコードの開発をおこなったので、これを高度化し磁性材料の熱磁気特性と冷凍機としての性能の関係についてもさらに検討していく。
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