研究実績の概要 |
1.三次電池は環境の温度変化で蓄発電するデバイスである。この電極に相転移を示す物質を用いると大きな電位変化が生じ高効率な三次電池が開発できる。その設計指針を決めるためには、電極材料の相転移挙動を理解することが重要である。本研究では、室温直上で電荷移動相転移を示すコバルト-マンガンプルシャンブルー類似体(CoMn-PBA)薄膜の酸化還元プロセスと電荷移動相転移の相関を放射光X線回折、赤外吸収分光測定、in situ可視吸収分光測定より評価した。その結果、電荷移動相転移はCoMn-PBAのNa濃度に対して、ほぼ全域で起こっていることが観測された。また、その酸化還元プロセスは、低温相ではCo, Mn, Feの順で酸化が進み、高温相ではFe, Mn, Coの順で酸化が進むことがわかり、電荷移動相転移に伴い酸化プロセスの逆転が生じることが明らかとなった。本成果は原著論文として報告した。
2.これまでの三次電池に関する研究報告は薄膜電極を用いたものであり、実用化まで視野に入れた場合には、二次電池と同じように、ペースト型電極での動作実証が必要不可欠である。そこで、粉末試料を活物質としたペースト型電極を用いた三次電池による動作実証実験を行った。本実験は、正極にCo-PBAを、負極にNi-PBA、電解液には、17mol/kg NaClO4水溶液を用いた2極式ビーカーセルにて行い、薄膜電極で作製した三次電池と同様に熱サイクル測定が可能であることを確かめた。本成果は原著論文として報告した。 また、三次電池の放電容量を最大化するためには、酸化還元電位の温度係数および電荷係数と、正極・負極の活物質重量比を制御することが重要であることがわかった。本成果は原著論文として報告した。
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