1.三次電池は環境の温度変化で蓄発電するデバイスである。この電池の性能指標は、熱起電力(VTB)と放電容量(QTB)である。VTB は、正極(α+)と負極(α-)の酸化還元電位の温度係数の差で決定される。他方、放電曲線の幾何学より、放電容量はQTB = -VTB/[β+/r+β-/(1-r)]で表すことができる。ここで、β+(β-)と r は正極(負極)の酸化還元電位の容量微分と正極活物質の重量比である。本研究では、三次電池電極材料であるプルシャンブルー類似体(PBA)の内、Co-PBAとNi-PBAを用いた三次電池の温度差30度における単位活物質重量当たりの電流値による出力電圧と放電容量の変化を45℃の環境下で調べた。その結果、VTBは電池の内部抵抗を反映して、電流値の増大とともに減少し、QTBは電圧降下のみを考慮して予想される値よりもわずかに小さくなることがわかった。これは、正負極の放電曲線が印加電流値により変形することを考慮することで説明できることを明らかとした。本成果は、原著論文として報告した。
2.本研究では、Co-PBA薄膜とNi-PBA薄膜を物理的に接合した無電解質三次電池の性能を調べた。その結果、5℃から15℃の間の熱サイクルにおいて観測される熱起電力VTBは従来の電解液を用いた三次電池と同等の値を示すことが明らかとなった。本成果は、原著論文として報告した。
3.本研究では、三次電池に使用する電解液を従来のナトリウム系電解液からリチウム系電解液に置き換え、電極材料であるPBA中のイオンサイトを占有するイオンをナトリウムイオンからリチウムイオンに置き換えた時に、酸化還元電位の温度係数がどのように変化するかを調べた。その結果、PBA中のイオンサイトを占有するイオンをリチウムイオンにすることで、ナトリウムイオン時よりも温度係数の絶対値が増大することを発見した。
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