研究課題/領域番号 |
21H01831
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
荒木 努 立命館大学, 理工学部, 教授 (20312126)
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研究分担者 |
毛利 真一郎 立命館大学, 理工学部, 准教授 (60516037)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 半導体 / 結晶成長 / 分子線エピタキシー / 窒化インジウム |
研究実績の概要 |
本研究課題の目的は、RF-MBE法を用いて作成したInN結晶を高温・高圧熱処理によって、さらなる結晶品質の改善を実現し、そのメカニズム構築とデバイス応用へ向けた基盤技術を開発することにある。課題1年目の本年度は、試験的に高温・高圧熱処理を行うためのInN結晶の作成に注力し、成長条件の最適化に努めた。 本年度は、RF-MBE法を用いたInN成長において、DERI法による結晶成長への成長条件の影響を検討した。特に、これまでDERI法を用いたInN成長においてはあまり検討されてこなかった成長温度、プラズマパワー、膜厚について検討を行い、これらのパラメーターを最適化して、高温・高圧熱処理に最適なInN結晶成長を目指した。 まずDERI法を用いて400℃~460℃の範囲で成長温度の異なるInN成長を行い、表面モフォロジー、結晶性、電気的特性評価による比較を行った。その結果、DERI法用いたInN成長においても、従来のGaNテンプレート上InN成長とほぼ同様に、430℃以上ではInNの分解が始まるため、410~420℃が結晶成長に最適な温度であることを示した。 次にInNの高温成長の可能性を探るため、より高温(450℃)での結晶成長を行い、プラズマパワー(80 W、100 W、200 W)と成長時間(0.5 h~8 h)の変化が、InNの結晶性、電気的特性に及ぼす影響を検討した。いずれのプラズマパワーを用いたInN成長においても、成長時間(膜厚)の増加に伴い、キャリア濃度は減少、移動度は増加し、電気的特性の改善が得られ、基板界面付近での欠陥の影響が大きいことが明らかとなった。また高温成長(450℃)においても、高いプラズマパワーを用いて厚膜成長することで表面荒れを抑え、比較的良好(キャリア濃度2×1018/cm3、移動度1600cm2/Vs)な電気的特性を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
RF-MBE法を用いたInN結晶成長条件については、これまで申請者らが開発したDERI法の成長条件を今年度の検討によりより最適化することができた。次年度以降の高温・高圧熱処理に必要なInN結晶を効率よくかつ再現性よく得るための準備が整っている。一方で、高温・高圧熱処理については、山口県宇部市の超高温材料研究センターにて、打合せや試験的処理を進める予定であったが新型コロナウイルス感染拡大の時期と重なり2年目以降に延期して実施することとした。
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今後の研究の推進方策 |
2年目においては、RF-MBE法を用いて作成したInN結晶に対して、実際に高温・高圧熱処理を施し、その効果を確認することを最重要の目標とする。高温・高圧熱処理については、計画書に記載の超高温材料研究センター(山口県宇部市)にて実施する予定であるが、委託費用や実験サンプルサイズ、スケジュールなどを考慮すると条件を試行錯誤しながら多くの実験を実施することは困難である。そこでまずは試験的な熱処理実験を量子科学技術研究開発機構SPring8内のビームラインにて、InNの高温・高圧熱処理を実施する予定である。この結果をふまえて、超高温材料研究センターで実施する熱処理の条件(圧力、温度、時間)を検討し、効率的に実験を行えるように計画する。熱処理後のInN結晶については、透過電子顕微鏡を用いた極微構造解析を中心に、構造変化、結晶性、電気的特性に表れる変化を観察する。
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