研究課題/領域番号 |
21H01840
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
浅原 彰文 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 助教 (00770091)
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研究分担者 |
美濃島 薫 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 教授 (20358112)
杉田 篤史 静岡大学, 工学部, 教授 (20334956)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 光周波数コム / デュアルコム分光 / メタマテリアル / 光物性 / 光渦 |
研究実績の概要 |
本研究では,光渦物性を研究するための基盤測定技術を,光コム分光を駆使して創出し,光渦応答特性を有する物質として『光渦メタマテリアル試料』を評価することで開発技術の有用性を実証する. 初年度は,まず光コムと光渦を組み合わせた分光測定システムの開発を進めた.本測定法の技術ベースは,これまで我々が開発してきた「デュアル光渦コム分光法」という光コムを用いたフーリエ干渉計測に基づく光渦光波の評価法である.本手法は,2台の光コムを用いた干渉分光法として知られるデュアルコム分光法に立脚し,シングルピクセルイメージング技術を付加して,空間分布情報を含んだ一連の干渉信号を取得する.得られた干渉信号の解析から,光渦を光周波数-OAM(光の縦-横モード)2次元スペクトルとして表現した包括的な分光情報を取得する.初年度の研究では,特に複数の横モード(OAMモード)モード間の相対的な位相関係の取得に関する原理実証を行った. さらに測定対象として,代表的なメタマテリアル構造のひとつであるスプリットリング共振器(Sprit-ring resonator: SRR)試料をリソグラフィ技術によって作製した.試料の構造パラメータは,電磁界数値シミュレーションに基づき,近赤外帯域に吸収スペクトルを有するように設計された.実験において,デュアルコム分光法を用いて,SRR試料の近赤外帯域における光学応答(複素透過率スペクトル)を直接測定できることを実証した. 以上の成果について,複数の国内・国際会議において学会発表を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定であった,光コムと光渦を組み合わせた分光測定システムの改良および光渦メタマテリアル試料の作製について進展があった. 分光測定システムの改良については,特に複数の横モード(OAMモード)間の位相スペクトル関係を測定することが実証された.この成果は,光渦光波の一般的な特性評価が可能であることを意味しており,本開発手法の重要な技術要素を示すことができた. さらに,測定対象として実際にSRR試料を作製し,光コム分光法のひとつであるデュアルコム分光法を用いて,その物性(近赤外帯域における複素透過率スペクトル)の直接評価が行えることを原理実証することができた.初年度目標のひとつとしていた光渦メタマテリアルの作製および評価までは至らなかったが,その基盤となるべきメタマテリアル作製技術や,試料の設計指針の検討などについて,おおむね順調な進展を得ることができた.これらは次年度の進展に向けて,重要な成果である.
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今後の研究の推進方策 |
今後は初年度に得られた知見をもとに,SRR測定試料の形状パラメータを改良し,光コム分光システムにおいて,より明瞭なスペクトル構造を取得可能な試料の作製を試みる.さらに,光渦物性研究のための光渦メタマテリアル試料の設計・作製および基礎評価を進める.対称性の崩れた金属ナノ構造(SRRやV字パターンのメタマテリアルなど)では,形状パラメータに依存して透過光の位相を定量制御できることが知られている.本研究では,非対称な形状分布を有するSRR構造(非対称SRRメタマテリアル)を有力な測定ターゲットとし,空間的な光位相制御が可能な光渦メタマテリアル構造を数値シミュレーション解析に基づき設計・作製する.さらに,作製した試料に対して,これまで開発してきた光コム分光システムを用いた評価を行う.これにより,作製したメタマテリアル構造のマクロな光学物性として,空間特性を含めた光学応答(屈折率スペクトル・吸収率スペクトル・軌道角運動量スペクトル・偏光など)の評価の原理実証をねらう.
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