研究計画に従い開発を完了したピーク出力がマルチテラワット,且つキャリアエンベロープ位相 (Carrier Envelope Phase: CEP) が安定化された数サイクル中赤外レーザーを用いた高調波発生研究を行った.高調波発生媒質としてアルゴンガス使用し,軟 X 線高調波スペクトルの CEP 依存性を計測すると共に,ハーフサイクルカットオフと呼ばれるスペクトル構造の確認を行い、単一アト秒パルス発生の励起光として開発した中赤外レーザーシステムが十分な性能を持つかの評価実験を行った.また,発生媒質をネオンガスに変更することで,水の窓域における高調波発生を試みた.発生法にはルーズフォーカス法を使用し,出力がナノジュール級のアト秒水の窓高調波を実現した.本結果より,単一ショットでの分光計測実施への見通しがたち,申請課題における最終的な研究目標を達成した. さらにレーザー開発において,DC-OPA (Dual-Chirped Optical Parametric Amplification)を発展させた新しいレーザー増幅法を提案し,テラワット級出力を持つシングルサイクルレーザーの設計及び開発を行った.2種類の非線形結晶を使用する事で,従来のDC-OPAでは不可能であった1オクターブを超える増幅帯域を実現することに成功した.開発されたレーザーシステムは,シングルサイクルパルスにおいて世界最高出力の性能を有する.
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