研究課題/領域番号 |
21H01852
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
大久保 章 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 主任研究員 (30635800)
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研究分担者 |
清水 祐公子 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 研究グループ長 (30357222)
松本 信洋 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 主任研究員 (30358048)
下坂 琢哉 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 研究グループ長 (40295473)
稲場 肇 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 研究グループ長 (70356492)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ガス分析 / 光周波数コム / デュアルコム分光 / 光共振器 / 共振器分散分光 / 標準ガス / 質量比混合法 |
研究実績の概要 |
デュアルコム共振器分散分光に向けて、高い濃度測定精度を維持しながら共振器長を調整できるよう、ガスが吸着しやすいベローズ部分の構造を工夫したサンプルセル一体型の光共振器を設計した。共振器分散分光のスペクトル解析プログラムを作成し、あらかじめ得られるスペクトルの予測が可能になった。また、通常のデュアルコム分光におけるガススペクトル解析プログラムを開発し、現状のデュアルコムガス分析の濃度測定感度と精度を評価した。さらに、いくつかの解析手法による違いについても検証し、それらの結果を応用物理学会で発表した。その他に、既存の光コムの光アンプと高非線形ファイバー部分を改良して強度雑音を低減し、これまで光コムの強度雑音で制限されていた測定感度をショットノイズレベルまで向上させた。
高精度の標準ガス調製については、まず、高純度メタンと高純度窒素を原料として、濃度5~6%のCH4/N2標準ガスを質量比混合法によって調製した。調製濃度の相対拡張不確かさは、8.4×10^(-5)だった。また、これらの調製ミスの有無を確認するために、熱伝導度型検出器を用いたガスクロマトグラフによる回帰直線分析を計7回繰り返し、標準ガスの分析濃度の相対拡張不確かさは10^(-4)未満であった。次に、上記のCH4/N2と高純度窒素を原料として、濃度1000 ppm付近のCH4/N2標準ガスを調製した。調製濃度の相対拡張不確かさは6.5~7.1×10^(-5)、分析濃度の相対拡張不確かさは10^(-4)だった。CH4/N2 1000 ppmの標準ガスは、上記の光共振器の評価に使用できる状態となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
デュアルコム共振器分散分光の進捗は、以下のとおりである。まず、共振器分散分光に用いるサンプルセル一体型の光共振器を製作中である。高い濃度測定精度を維持しながら共振器長を調整できるように、ガスが吸着しやすいベローズ部分の構造を工夫した共振器を設計した。ただ、世界的な半導体不足の影響により真空関連部品の調達が遅れており、共振器の準備が当初の予定より遅れている。その代わりに、共振器分散分光のスペクトル解析プログラムを前倒しで準備し、第1バージョンが完成し、あらかじめ得られるスペクトルの予測が可能になった。
高濃度精度の標準ガス調製の進捗は、以下のとおりである。高純度メタン(CH4)と高純度窒素(N2)を原料として、濃度5~6%および濃度1000 ppm付近のCH4/N2標準ガスを、相対拡張不確かさで8.4×10^(-5)および6.5~7.1×10^(-5)で調製した。また、同標準ガスの調製ミスがない事を確認するために、熱伝導度検出器付ガスクロマトグラフによる回帰直線分析を調製濃度の不確かさに近い分析精度で実施することを試みた。その結果、相対拡張不確かさ10^(-4)以下の分析精度で同標準ガスの調製ミスがない事を確認した。CH4/N2 1000 ppmの標準ガスは、上記の光共振器の評価に使用できる状態となった。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、まず、昨年度までに準備できなかった光共振器関連の調達を急ぎ、共振器分散分光用の光共振器を完成させる。共振器のフリースペクトラルレンジが光コムの繰り返し周波数の整数倍になるように、共振器長の制御機構を構築する。周波数制御系が完成したら、共振器パラメータ(フリースペクトラルレンジおよびフィネス)の測定とデュアルコム共振器分散分光の原理実証実験を行い、濃度測定感度と精度を評価する。
また、高濃度精度の標準ガス調製については、ガスクロマトグラフの分析精度の向上を目指して、検出器を水素炎イオン化検出器に変更し、分析濃度の不確かさを確認する。
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