研究課題/領域番号 |
21H01855
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
斉藤 拓巳 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (90436543)
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研究分担者 |
青柳 登 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 先端基礎研究センター, 研究副主幹 (80446400)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 先新第三紀堆積岩 / 拡散 / 収着 / バリア |
研究実績の概要 |
超長期の半減期を有する放射性核種を含む高レベル放射性廃棄物やTRU廃棄物の地層処分では,閉鎖後の長期安全性が,我々が人工的に敷設するバリア材料が有する核種収着性や地下水の流入抑制等の性能に加えて,処分場周囲の母岩に内在する元素を保持する性能,つまり,天然バリアとしての性能に立脚する.我が国の地質環境は多様性に富む.特に,先新第三紀堆積岩は複雑な地質構造を有しており,我が国の深部地下の地質構造の多くを占めているが,未だ放射性廃棄物処分における天然バリアとしての性能が明らかにされていない.本研究では,そのような先新第三紀堆積岩に対する放射性核種の収着・拡散挙動を評価し,亀裂近傍スケールの核種移行モデルを開発することを目的としている. 2021年度は,付加体堆積岩の生成プロセスを参考に,産状の異なる岩石コアを採取した.また,得られたコアから薄片を作成し,偏光顕微鏡や電子顕微鏡によって調べると共に,粉末にした試料を用い,鉱物組成をX線回折によって調べた.さらに,得られた鉱物組成を元に,熱力学計算を行い,後段の実験の液相条件を決定した.そして,得られた岩石コアを粉末にした試料を用い,CsやIを対象に収着実験を開始した. 偏光顕微鏡や電子顕微鏡から,入手したコアは,比較的均質で砂岩,泥岩を主体とするものに加えて,砂岩,泥岩内に,チャートやカルサイトが分布した先新第三紀堆積岩に特有のblock-in-matrix構造を有し,脈や亀裂など,核種移行において,重要な構造要素を有していることが明らかになった.また,X線回折から,岩石を構成する主要な鉱物として,石英,緑泥石,曹長石,カルサイト,イライトなどが含まれていることが分かった.さらに,液相条件として,カルサイトの溶解平衡を考慮し,pH 8 ~ 9,10 mM 炭酸緩衝液を選定した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナの影響により,岩石試料の入手が遅れたが,一部繰越をすることで,岩石のキャラクタリゼーション,および,液相条件の設定を完了し,予定通り収着試験を開始できた.
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今後の研究の推進方策 |
昨年度から継続して,岩石コアのキャラクタリゼーションと核種の収着挙動の評価を実施すると共に,新たに破過実験を開始する. 岩石コアから薄片を作成し,そのテクスチャを偏光顕微鏡や電子顕微鏡によって調べると共に,粉末にした試料を用い,鉱物組成をX線回折によって調べる.また,今年度後半から開始する破過実験で問題となる岩石の空隙構造や面構造を,実体顕微鏡による3次元観察や蛍光性樹脂を含浸させた試料の蛍光顕微鏡観察,そして,X線CT測定によって評価する.さらに,得られた鉱物組成を元に,熱力学計算を行い,収着実験や破過実験の液相条件となる間隙水の水質を決める.粉末にした試料を用い,安全評価上重要となる核種やその模擬核種の収着実験を昨年度から継続する.収着実験に供する核種は,Cs,Eu(3価アクチニドの化学アナログ),U,I等とし,核種の堆積岩試料への収着をバッチ法や時間分解型レーザー蛍光分光(TRLFS)測定などを通して評価する.ディスク上に整形した岩石試料を用いて,破過実験を開始する.今年度は,重水,あるいは,トリチウム水を用いた透水挙動の評価に加え,CsやIなどの比較的収着量の小さい元素を対象に,透過型,および,マイクロリアクタ型の破過試験を行い,実験体系の確立をする.さらに,岩石のキャラクタリゼーションの結果,および,模擬核種の収着挙動を踏まえ,予察的な移行モデリングを行い,次年度の亀裂近傍のミクロスケールでの移行モデルの構築に繋げていく.
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