超長期の半減期を有する放射性核種を含む高レベル放射性廃棄物やTRU廃棄物の地層処分では,閉鎖後の長期安全性が,我々が人工的に敷設するバリア材料が有する核種収着性や地下水の流入抑制等の性能に加えて,処分場周囲の母岩に内在する元素を保持する性能,つまり,天然バリアとしての性能に立脚する.北欧諸国などの安定大陸に位置し,深部地下の地質構造が比較的均一な国とは異なり,我が国は,大陸プレートに海洋プレートが沈み込む変動帯に位置し,その地質環境は多様性に富む.特に,先新第三紀堆積岩はblock-in-matrixと呼ばれる複雑な地質構造を有しており,我が国の深部地下の地質構造の多くを占めているが,未だ放射性廃棄物処分における天然バリアとしての性能が明らかにされていない.本研究では,そのような先新第三紀堆積岩対する放射性核種の収着・拡散挙動を評価し,亀裂近傍スケールの核種移行モデルを開発する. X線CTで得られたCT像を解析することで,破過試験に供した岩石試料の細孔分布や亀裂,岩脈などの物質移行に関わる構造の3次元的分布を再現し,拡散試験の結果として得られる破過挙動に当てはめることで,模擬核種の拡散挙動を評価した.特に,収着試験の結果から,一部の核種に対して,岩石中の雲母系鉱物の寄与が示唆されている.CT像や顕微ラマン測定,偏光顕微鏡観察,SEM-EDX測定の結果を組み合わせた評価の結果,岩石試料中の雲母系鉱物が泥岩マトリクス部に均一に分布していることを明らかにした.また,時間分解型レーザー蛍光分光測定(TRLFS)により,Eu3+の岩石マトリクス内部での化学形を評価した.そして,岩石キャラクタリゼーションの結果として得られた岩石の空隙構造や鉱物組成を元に,拡散-収着モデルを検討した.
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