研究課題
原子力構造材料の照射影響評価において,たとえ同量の放射線照射量を与えたとしても線量率が違う場合,レベルの異なる照射影響が発現することがあります。これを線量率効果といい,従来は格子欠陥の拡散方程式によってモデル化されてきました。このアプローチには,大量の格子欠陥が同時に形成されるような現象をうまく表現できないという問題があります。そこで我々は,中性子と物質の二回の近接した衝突現象が互いにどのような影響を及ぼしあうかに着目し,それを実験的に再現することで,線量率効果をモデル化することを目指すことにしました。一つの目は,材料を絶対零度近くまで冷却し,電気抵抗率の変化から,照射によって導入された格子欠陥の数の変化を推定するという古典的な実験手法です。過去の実験装置をリノベーションして再利用することとし,制御系一式の更新を終えましたが,共同利用施設における試料の冷却システムの問題から,期待したほど多くのデータは取得できませんでした。しかし,研究の過程で,過去の同種の実験群で前提となる解析条件に不正確な点があったことが見いだされ,最新のはじき出しモデルを利用した再解析が実施されました。その結果,一度に大量にはじき出しを生じるような高速中性子との反応では,欠陥の抵抗率への寄与を高く見積もり過ぎていたことが示唆されました。二つ目は,加速器と透過電子顕微鏡を結合した装置を利用して,導入された欠陥同士の相互作用を直接観察する手法です。あらかじめ,観測しやすい照射欠陥を試料に導入し,それが追加のイオン照射や加熱操作によって,どのように変化するか(サイズの成長,回復,複数の欠陥集合体の合体など)を観察しました。特に,ステンレス鋼中にみられる微小な析出物の評価に力を入れて取り組み,照射量と線量率が集合体の形成挙動に与える影響を明らかにすることができました。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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Nuclear Materials and Energy
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