研究課題/領域番号 |
21H01859
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
大垣 英明 京都大学, エネルギー理工学研究所, 教授 (10335226)
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研究分担者 |
静間 俊行 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 東海量子ビーム応用研究センター, 上席研究員 (50282299)
早川 岳人 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 東海量子ビーム応用研究センター, 上席研究員 (70343944)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | NRF-CT / LCSガンマ線 / 複数同位体の同時NRF測定 / NRF反応断面積 / 同位体イメージング |
研究実績の概要 |
本研究は、電子蓄積リングの電子ビームに外部からレーザービームを正面衝突させ、LCSγ線を発生させる手法において、直径1~2mmのビーム径内でエネルギー分布がフラットなFlat-LCS(F-LCS)γ線ビームを発生する手法を開発する。また、このF-LCSγ線を用いて、光核共鳴散乱(NRF)を励起して、複数の同位体の同時イメージングを行うとともに、NRFの定量分析を試みる。F-LCSγ線は、電子蓄積リングの円偏光アンジュレータを用いて電子ビームをらせん運動させ、これにレーザーを衝突させる事で生成する。 本年度においては、分子科学研究所のUVSORのBL1Uビームラインを用いてF-LCSγ線発生実験を行った。実験では、γ線コリメータの径とガンマ線エネルギースペクトルの関係について、大型Ge検出器及び高分解能LaBr3(Ce)検出器を用いて測定した。また、F-LCSγ線発生に関するシミュレーションコードを開発し、UVSORでの実験結果との比較を行った。この結果、アンジュレータパラメータであるK値を0.2に設定した場合、通常のLCSγ線の場合2.7%のエネルギー幅(半値幅)が、7.2%にまで拡大する事に成功した。 さらに、このF-LCSγ線ビームを用いて3つの同位体(Pb-206、Pb-207 とPb-208)の同時NRF測定を、LaBr3(Ce)と大型Ge検出器からなるハイブリッド検出器システムを構築して行った。この結果、Pb-207 とPb-208のNRFピークの同時測定に成功した。一方、NRF反応断面積が小さいPb-206のNRFピークの測定にはLaBr3(Ce)では困難であることが判明した。更に、UVSORのBL1Uビームラインには、電ビーム入射に起因するバックグラウンドγ線の存在が大きく、NRFの定量評価に対して深刻な影響を与える事が分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、令和3年度に購入予定のPb-206の高濃縮度試料が、COVID-19の影響で輸入困難になり、令和4年度に持ち越しした。最終的に同試料を所有している国内共同研究者に借用する事で、NRF実験を行う事ができた。結果として計画を上回る3つの同位体に対するNRF測定を行い、上記の結果を得ている。
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今後の研究の推進方策 |
R4年度までの研究で、UVSORにてF-LCSγ線の発生実験とこれを比較評価可能なシミュレーションコードの開発に成功している。この結果、当初の目標の2mmのビーム径でも、エネルギー広がりを10倍程度拡大するとともに、比較的均一なエネルギー・空間分布を有するf-LCSガンマ線の発生に成功した。更に、このF-LCSγ線を用いて、5512 keV(208Pb)、5490 keV(207Pb)、5471 keV(206Pb)のNRF同時測定に成功した。なお、NRF反応の絶対値評価に関しては、BL1Uビームラインに存在するバックグラウンドの影響がまだ未解決の問題として残っている。
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