研究課題/領域番号 |
21H01860
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
後藤 康仁 京都大学, 工学研究科, 准教授 (00225666)
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研究分担者 |
長尾 昌善 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 研究グループ長 (80357607)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | フィールドエミッタアレイ / 耐熱・耐放射線 / 電子デバイス / 窒素組成 / 仕事関数 |
研究実績の概要 |
直流及び高周波の反応性スパッタリング法を利用して、異なる窒素/アルゴン流量比の下で窒化ハフニウム薄膜を作製し、流量比などの成膜条件と薄膜の窒素組成の関係を明らかにした。大気中においてそれらの薄膜の仕事関数を測定するとともに、真空中における仕事関数測定のための予備的な実験を行った。大気中において測定した仕事関数は、窒素組成の上昇とともに高い値を示し、従来の傾向が定性的には窒素組成の低い領域まで延長できることが明らかとなった。真空中において薄膜を加熱して吸着分子を脱離させることで仕事関数が低下することがあきらかとなったが、今年度の条件では表面が若干酸化することがイオンビーム分析の結果明らかとなった。 SiN/SiO2の二層構造の絶縁層を有するFEAの作製プロセスを適用して、HfN薄膜をコーティングしたFEAの試作を行った。窒素組成の違いによる電子放出特性の違いを確認することができた。しかしながら、窒素組成を制御して成膜したHfNはFEAを露出する工程で使用するフッ化水素酸に溶解することがわかり、2021年度に開発した作製プロセスを単純に適用しただけでは、エミッタ表面が十分にHfNで被覆できないことが明らかとなった。そこで、フッ化水素酸を使用せずにドライエッチングだけで、エミッタ先端を露出する方法を新たに用いてFEAを試作した。SEM観察により、十分な厚みのHfNで被覆されたFEAが形成できたことが明らかとなった。 また、ガンマ線照射のための真空容器の準備を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目的であった、窒化ハフニウムの窒素組成と結晶性、抵抗率、可視光反射率などの物性に加え、仕事関数の関係を明らかにすることができた。また、真空中での仕事関数測定装置の動作も確認し、いくつかの薄膜について表面吸着粒子の影響を排除した表面の仕事関数の評価も行った。2021年度に開発した二層構造のFEAの作製プロセスを用いてHfN被覆FEAを試作し、作製方法に課題があることも明らかとなったが、FEAの電圧電流特性を評価し、電子源材料の効果をある程度検証することができた。ガンマ線照射の準備も整ってきている。以上のことから、概ね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
窒素組成と仕事関数の関係をより詳しく調べるために、真空中での仕事関数の評価をさらに進める。2022年度の実験で明らかとなった真空中加熱時の表面の酸化の問題は、過去に行った実験と比較して装置内部の圧力が若干高かったことが原因と考えられるため、真空加熱装置の圧力の低減を図る。2022年度に実施した研究で、現在のプロセスではHfN薄膜がフッ化水素酸で溶けることが明らかとなった。フッ化水素酸を使わずにドライエッチングでエミッタ先端を露出させることでFEAは形成できたが、ドライエッチングではプラズマによるダメージの影響を排除しきれない。今後は、HfN薄膜の成膜条件の検討や、新たにフッ化水素酸を使わないFEAの作製方法、HfNがフッ化水素酸に接触しないような作製方法を考案してダメージのないHfN被覆FEAが作製できるようにし、FEAの電流電圧特性の評価を行う。また、作製したFEAの放射線環境下における動作特性なども調査する。
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