研究課題/領域番号 |
21H01867
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
羽柴 公博 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (60456142)
|
研究分担者 |
福井 勝則 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (70251361)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | ロータリーパーカッション / 岩盤 / 掘削 / シミュレータ / さく岩機 |
研究実績の概要 |
地下深部の探査や開発,科学的調査において,ボーリングによる速く正確で効率的な岩盤掘削技術が求められている.打撃と回転により岩盤を掘削するロータリーパーカッション掘削は,強固な岩盤に適用可能であるが,軟岩用のロータリー掘削に比べると速度は遅く,直進性や耐久性に劣る.そこで本研究では,ロータリーパーカッション掘削の高度化(高出力化,高効率化,高精度化)を目指した検討を行っている. 令和3年度は,「応力波の高速伝播機構」と「ビットによる岩盤の衝撃破壊機構」を解明するための新しい試験装置を,さく岩機メーカーの協力のもとで開発した.この装置は,ロータリーパーカッション掘削を行うためのさく岩機,さく岩機に推力を加えるための油圧装置とガイドシェル,複数のロッドとロッド継ぎ手,複数のボタンチップが埋め込まれたビット(ボタンビット),岩石ブロック,および,それらを載せるための架台などで構成されている.通常のさく岩機では打撃と回転をロッドとビットに連続的に与えるが,これを打撃と回転をそれぞれ1回ごとに与えるように改造した.この試験装置を用いて,ボタンビットを岩石ブロックに高速で貫入させる試験(衝撃貫入試験)を,種々の試験条件のもとで実施した.その結果,ロッド中の応力波の伝播特性,継ぎ手を透過する際の減衰特性,反射波のエネルギーを吸収するダンパーの特性を把握することに成功した.さらに,衝撃貫入試験を繰り返し行うことで,ビット荷重と貫入量の関係(荷重-貫入量曲線)やそのばらつき,穿孔速度におよぼす推力,ロッド本数,ダンパー圧などの影響を明らかにした.これらの成果は国内学会で発表した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画において,令和3年度は(1)応力波の高速伝播機構の解明,(2)ビットによる岩盤の衝撃破壊機構の解明,を実施する予定であった.そのために,まず,実際のロータリーパーカッション掘削を模擬し,さらに,これまでよりも大きな打撃エネルギーによる衝撃貫入試験を実施するための装置の開発に取り組んだ.装置の新規開発では,設計や検定に時間がかかるが,これらを慎重に実施するとともに,多くの条件下で衝撃貫入試験を実施した.(1)応力波の高速伝播機構の解明においては,当初予定していたチューブ式ロッドでの試験までには至らなかったが,これまでに得られていない条件下での応力波の伝播特性や減衰特性に関する高精度なデータを取得することに成功した.その一部の整理・分析により,推力やロッド本数の影響を把握することができた.(2)ビットによる岩盤の衝撃破壊機構の解明においても,ボタンビットの貫入特性を解明するために重要な,これまでに得られていない条件下での重要なデータを取得した.特に,歪ゲージによる応力測定において,入射波と反射波が重ならないようにデータを取得することで,これまでよりも精度良く荷重-貫入量曲線を求めることができるようになった.さらに,1個のボタンチップのみが埋め込まれたビット(1チップビット)による貫入試験結果の整理・分析にも着手した.これらの成果より,研究全体としてはおおむね順調に進展しているといえる.
|
今後の研究の推進方策 |
令和4年度は,令和3年度に引き続き(1)応力波の高速伝播機構の解明と(2)ビットによる岩盤の衝撃破壊機構の解明を進めるとともに,各要素モデルの構築と,それらのモデルのシミュレータへの組み込みを試みる. 応力波の高速伝播機構に関しては,令和3年度に実施したボタンビットの衝撃貫入試験の未整理の結果を整理・分析し,ロッドおよびロッド連結部を伝播する応力波の波形におよぼす試験条件(推力,ロッド本数,ダンパ圧など)の影響を検討する.その検討結果をもとに,不足している条件での追加の衝撃貫入試験を実施する.これらの結果を用いて,応力波の高速伝播において重要なロッド連結部のモデルを,申請者が過去に提案したスリーブ式ロッド継手のモデルを参考にしながら高精度化する. ビットによる岩盤の衝撃破壊機構に関しては,令和3年度に実施したボタンビットの衝撃貫入試験の未整理の結果を整理・分析し,ボタンビットの岩石への貫入特性におよぼす試験条件(推力,ロッド本数,ダンパ圧など)の影響を検討する.特に,申請者が過去に提案した荷重-貫入量曲線を精度良く求める方法が,新しい条件での結果に適用できるかどうかを検討する.その検討結果をもとに,不足している条件での追加の衝撃貫入試験を実施する.並行して,1チップビットでの貫入試験結果を整理・分析し,荷重-貫入量曲線におよぼすビット径と岩石物性値の影響を定式化する.ビットの貫入による岩盤の衝撃破壊に関して,1チップビットの貫入による破壊,その影響領域,岩盤表面の凹凸を考慮したモデルの構築を試みる.
|