研究課題/領域番号 |
21H01869
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
岸田 潔 京都大学, 工学研究科, 教授 (20243066)
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研究分担者 |
緒方 奨 大阪大学, 大学院工学研究科, 助教 (50868388)
中島 伸一郎 山口大学, 大学院創成科学研究科, 准教授 (70346089)
安原 英明 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 教授 (70432797)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 水圧破砕 / 損傷理論 / THMC連成解析 / 透水試験 / 地熱開発 |
研究実績の概要 |
水圧破砕は岩石に引張破壊を生じさせて亀裂を生成させる技術であるが,その引張亀裂の発生・進展プロセスを精緻に予測することは現状でも難しい.これは岩石自体の不均質性等に起因している.つまり,引張亀裂の発生・進展プロセスを精緻にかつ正確に記述可能な解析モデルを構築できれば,地熱エネルギーの効率的で継続的な生産に寄与する手法の検討が可能となる.そこで本申請では,偏光顕微鏡および走査型電子顕微鏡観察やX線回折分析により岩石の鉱物組成を精緻に把握し,その情報を用いて岩石が有する不均質性を(統計的に処理するのではなく)決定論的に記述できる解析モデルを構築する.また,構築される解析モデルを用いて圧裂試験の再現解析を行い,モデルの妥当性・有用性を検証する.さらに,実際の温度・地圧環境を模擬した地熱貯留層で水圧破砕をシミュレートし,地熱回収の増産効果を予測評価する. 本年度は,対象花崗岩供試体のX線CT撮影,圧裂試験を実施し,基本物性,岩石の基本構造を把握を行った.圧裂試験で生成したき裂は,加温しながら透水し,X線CTで構造の変化が観察できる試験装置が完成し,まず,20度と60度で載荷除荷過程において透水試験を行い,透水量の計測を実施した.併せて,実験前後のき裂の状態をX線CTにより計測することに成功した. 一方,シミュレーションでは,X線CTの情報を元にモデルを構築し,鉱物同士の界面での破断を検討できるモデルの導入を実施し,圧裂試験のシミュレーションに成功している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本申請は,①微視構造観察により,対象岩石の鉱物組成を把握するシステムの構築,②引張き裂発生・進展プロセスを可視化する圧裂試験システムの構築と試験の実施,③不均質性を決定論的に記述する解析モデルの構築,で構成される. ①の微視構造の観察は,X線CTを用いて実施している.今年度は,岩石試料に乾湿プロセスを与え,それに伴う構造の変化の有無を捉えることを試みた.X線CT計測の都度,座標位置が異なるが,岩石の鉱物を目印として機械学習により座標を統一し,乾湿プロセスに伴う構造の変化を議論可能とした. ②の圧裂試験は終了し,圧裂試験によって生じた引張き裂の形状計測も終了している.また,この引張き裂の透水性の経時変化を観察する装置も完成し,載荷・除荷プロセス下での透水性の変化が計測可能となった. ③では,①で計測した鉱物分布を基に鉱物界面での破壊をシミュレートできるモデルと開発し,圧裂試験のシミュ―レーションを行った.
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今後の研究の推進方策 |
本申請は,①微視構造観察により,対象岩石の鉱物組成を把握するシステムの構築,②引張き裂発生・進展プロセスを可視化する圧裂試験システムの構築と試験の実施,③不均質性を決定論的に記述する解析モデルの構築,で構成される. ①は,当初目標は達成されており,②で実施する実験において定期的に行われるX線CTによる岩石構造とき裂構造の変化を分析することを実施する. ②では,圧裂試験で作成したき裂の長期透水性の変化の計測を行う.温度および拘束圧は変化させ,透水試験を実施しながら定期的にX線CTの計測を行う. ③では,前年度まで圧裂試験のシミュレーションを実施していたが,水圧破砕のシミュレーションを実施する.
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