研究課題/領域番号 |
21H01872
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
木内 勝 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 准教授 (90304758)
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研究分担者 |
吉田 隆 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (20314049)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 直流電力輸送ケーブル / 超伝導ケーブル / 縦磁界効果 / ナノ組織制御 / 臨界電流密度 |
研究実績の概要 |
本研究では、ナノ組織制御技術を用いて線材に人工ピン(欠陥)を導入したRE(Rare-Earth)系コート超伝導線材(以下RE系コート超伝導線材)と、超伝導線材の電流通電の方向に磁界を平行に加えることにより電流容量が大きく増加する縦磁界効果を用いて軽量でコンパクトな高性能直流電力輸送ケーブルの開発を目的とする。今年度の実績は下記である。 1)縦磁界で有効に作用する人工ピン入りRE系コート線材については、様々な手法で作製されている市販超電導線材に注目し、作製条件や人工ピンの形状と縦磁界下での臨界電流密度特性の関係を調査し、その機構解明を行った。特に大きな臨界電流密度の値を示したのは、IBAD基板にPLD法で作製された線材である。また、一般的な横磁界下で有効に働くナノロッドのような人工ピンは、縦磁界下では臨界電流密度の増加に有効に作用しないことがわかった。すなわち、線材作製時に自然に導入されるような微細で、電流のパスの妨げにならないようなピンが縦磁界下では有効であることを確認した。すなわち縦磁界下では、横磁界下とは異なるピンニング機構が作用していることがわかった。 更に、金属超伝導体に比べて、大きな臨界電流密度が得られない理由について、調査を行った。特にコート線材の場合は、薄い二次元的な電流パスが大きな臨界電流密度が得られない原因の一つと考えられ、超伝導層が厚くなると臨界電流密度の増加が若干大きくなることがわかった。 2)ケーブル開発においては、大容量化のために、2層の縦磁界ケーブルを設計、作製した。さらにこのケーブルの液体窒素下での通電試験を実施し、輸送電流値は設計値とおおむね一致することを確認した。また、多層化を行った場合の数値解析を行い、このケーブルの有効性の確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
線材の特性評価及び開発に関しては、コロナ禍で大学への入校制限や、研究に必要な情報収取の場が失われ、研究が一時的に止まった時期が生じた。特に学会等の中止により線材開発に関する情報を得ることができな時期が出た。ただし、学会等も従来の開催状態に戻りつつある。 縦磁界下で大きな臨界電流密度が得られる条件として、人工ピンの導入や作製方法の観点から調査を行っている。継続して、調査を行い、機構解明を行う。 ケーブル開発においては、多層のケーブル評価を進めており、その手法を確立しつつある。
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今後の研究の推進方策 |
不足している線材研究に関する情報を学会などで収集し、縦磁界下で有効に作用するピンニング特性を調査する。 今後、ケーブルの過冷却温度下での評価に必要な大型の液体窒素容器を設計、開発を行う予定である。これと並行して、多層構造を有するケーブルの開発技術を向上させる。
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